今年10月、41才という若さで急逝した流通ジャーナリスト・金子哲雄さんが、死の1か月前から、最後の力を振り絞って書き上げた著書『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館)が、11月22日に出版される。
金子さんは雑誌・女性セブンで、『「女性セブン」を読めばニッポンと経済が見える』の連載を15か月続けていた。その連載の担当者に、金子さんのマネジャーから連絡をもらい、自宅を訪ねたのが、亡くなる1か月ほど前のことだった。
マネジャーによれば、金子さんは肺カルチノイドという病気を患い、もう助からない、本人が会って話をしたいから来てほしいといっている、とのことだった。
マンションを訪ねると、白い半袖シャツにスウェットのパンツ姿で、すっかりやせてしまった金子さんがベッドに坐っていた。直径5mmほどの酸素を送るチューブが両方の鼻につながれている。
「すみません。ぼくの最後のわがままで来ていただいて」
胸の前で手のひらを合わせて、金子さんは頭を下げた。たびたび咳き込みながら、それを抑えるために傍らの麦茶をひっきりなしに飲んで、呼吸を整えている。
実は数日前に危篤状態に陥り、今はよく今日まで生きていたと思うような状態、あと何日生きられるかわからないのだという。しかし、金子さんはきっぱりとこう言った。
「今、僕が流通ジャーナリストとして考えていることを、できれば、単行本にしてもらいたいんです」
それは、今まで聞いたことのない、しがみつくような声だった。
単行本作りはその日から始まった。できるだけ金子さんの体力を消耗させないように進めること、最低限1冊の本になる構成を考えてまずひと通り作り、そのあと、体力が続く限り、各章に肉付けして行くことを決めた。
そうしてでき上がった金子さん最後の著書。残念ながら生前に発刊することはかなわなかったが、そこには、金子さんが40才にして「余命宣告」を受けて後、妻・稚子さんとともに生きたおよそ500日の記録があますところなく綴られている。
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号