約60坪の土地に立つ2階建ての一軒家。図書室には5000冊もの本が並ぶ。
「テレビやパソコンはあえて置かない。不登校の子供が家に引きこもって何をしているかというと、テレビやゲーム。人と関わらずにパソコンに逃げ込むようなことはマイナスです」
こう話す夢街道国際交流子ども館・理事長の比嘉昇さん(72)は、高校卒業後、製鉄会社に勤務。28歳で大学に入り、32歳で教師に。奈良市内で28年間にわたって教鞭を取り、小・中学校校長も歴任。2001年に定年退職し翌年「夢街道国際交流子ども館」を設立した。
「最後に校長として3年間勤務した中学校は、校内暴力で大荒れに荒れていた。学校の窓ガラスは毎日のように割られ、壁はボコボコ。年間のガラス修理代は140万円にものぼりました。そうした対応に追われ、いわゆる不登校の子供たちはほったらかしにならざるをえなかった。申し訳ないという贖罪の気持ちをずっと引きずっていたんです」
退職金で土地を購入、銀行からの数千万円の借金と知人友人からのカンパで設立。授業料はなるべく安く抑え、全国に400人近くいる会員からの寄付でなんとか賄っているという。
裏には畑や田んぼがあり、子供たちが自ら収穫。野外活動も活発で、子供たちは共同作業を通じて人間関係を築きながら、人間が本来持っている感覚を磨いていく。
「子供の自主性と個人の欲求に基づき、カリキュラムや時間割を組んでいます。例えば運動会の企画では、パン食い競走を対戦の組み合わせを変えて10回ぐらいやったことも」
自分たちが考えたことを実行することで、子供たちは自信と責任感を持ち、作る喜びを持つ。自分のやりたいことを見つけると、大学に進学する子供も多いという。
※週刊ポスト2012年11月23日号