いま“崩壊”という言葉が、長引く経済の低迷など、この不安な時代を象徴するキーワードになりつつある。実際、ユーロ崩壊、政権崩壊、家庭崩壊など、天下国家から身近な場まで、さまざまなシーンでの使用が目につく。
崩壊という言葉自体、決して新しいものではない。ただ、言葉の使われ方は、浸透し始めた頃から変わってきているようだ。トレンドウオッチャーのくどうみやこさんはこう分析する。
「“崩壊”という言葉がメディアでよく使われるようになったのは、1990年代の“バブル崩壊”。この言葉はまさに、価値観や安定感が崩れることの象徴になりました。しかし最近は、言葉の使われ方が変わってきています。単に崩れる、壊れるという意味だけでなく、“年金崩壊”“医療崩壊”のように、この先どうなるかわからない不安な状態にも使われるようになっています」
では、いま注目すべき“崩壊”は何か。くどうさんに聞くと、女性なら慄かずにはいられない回答が返ってきた。「“肌崩壊”がそのひとつですね。まだ修復可能なうちに、何ができるのか考え、行動するための警句ととらえるといいでしょう」
肌崩壊とは何なのか。多くの乾燥・敏感肌の女性を診察してきた皮膚科医の平田雅子さんは、「秋から冬は、乾燥によって肌のバリア機能が低下する時期。“肌崩壊”を招く人が増えている」と注意を喚起した上で、その状態について、以下のように解説する。
「肌に水分をとどめておく“セラミド”が不足すると、肌のバリア機能が低下し、汗やホコリ、衣類のこすれですら刺激になってしまうんです。肌は、とても薄い膜“角層”によって守られています。角層は、角層細胞が何重にも重なっています。そのすき間を埋めているのが、細胞間脂質の主成分となる“セラミド”です。
健康な皮膚は、角層細胞の間にセラミドがギュッと詰まっていて、角層の外側が皮脂の膜で覆われています。ところが、乾燥などによって皮脂やセラミドが奪われると、角層細胞の間がスカスカになり、バリア機能が低下。つまり、セラミドが不足した肌とは、隙間から外部の刺激が侵入しやすい敏感な状態。カサつきやかゆみを引き起こす、原因になるのです」
実際に、8割の人が“乾燥肌を自覚している”という調査もあり、ひどくなると、肌がピリピリして化粧もできない、背中や足がカユくて眠れないといった、敏感肌になることも。肌が崩壊するのでは、という恐怖を感じている人は多い。対策を平田さんに伺った。
「バリア機能が低下する要因のひとつは、洗いすぎにあります。洗いすぎによって角層を乾燥から守る皮脂膜が流れて角層がむき出しになり、セラミドがどんどん流れてしまいます。肌荒れでいらっしゃる患者さんの多くは、洗顔方法を見直すと、よくなります。さらに、不足したセラミドはクリームなどで補いましょう。日中もこまめにクリームを塗って保湿を心がけてみてください」
セラミド機能成分を豊富に配合し、しっとりするのにベタつかないと評判の「キュレル潤浸保湿フェイスクリーム」(花王)や、低刺激の「ノブⅢモイスチュアクリーム」(常磐薬品工業)など、手軽な商品も有効だという。洗いすぎないこと、そして、クリームによる保湿で、肌崩壊の不安を取り除き、生き生きとした肌を再建させたい。