老舗として名高い石川県の旅館・加賀屋で、11月から全室に『エアウィーヴ四季布団』が導入される。ほかにも帝国ホテルが期間限定のプランで導入、JALの新しいビジネスクラス「スカイスイート」で採用、阪急うめだ本店での取り扱いもスタートするなど、人気マットレスパッドの極上の寝心地を提供しようという動きが広がっている。
『エアウィーヴ』の名が世に轟くようになったのは、トップアスリートたちが“密かに”愛用していることが知られるようになってからだ。「白鳥の湖」にのせた華麗な演技で、今シーズンの初戦、フィギュアスケート中国杯を制した浅田真央選手。2011年、遠征先に持っていくのを忘れないようにと、手の甲に「マットレス」の文字を書いていたのをテレビカメラが捉え、話題となった。他にも、水泳の北島康介選手、テニスの錦織圭選手、ゴルフの宮里美香選手など、多くの一流選手が『エアウィーヴ』を愛用している。
そして今年。日本人選手がメダル38個を獲得したロンドンオリンピックでは、文部科学省がオリンピック選手を支援する“チーム『ニッポン』マルチサポート事業”に『エアウィーヴ』が採用され、200名近くの選手たちの活躍を支えた。
医師で早稲田大学教授の金岡恒治さんは、とくに睡眠中の姿勢は、アスリートのコンディションを左右すると話す。
「長年オリンピック選手支援に携わっているのですが、2000年のシドニーオリンピックの時には、現地で腰痛となり、棄権せざるを得なくなった選手がいました。それを教訓に、ロンドンでは本番に最高のコンディションで臨めるようにしたのです。『エアウィーヴ』は腰痛予防の点でも貢献したと思います」
オリンピックの勝利に向け、選手たちには事前に3タイプの硬さの『エアウィーヴ』を試してもらい、好みのものを現地ロンドンに持ち込んだ。
「『エアウィーヴ』は、高反発なマットレスなので、腰部分の沈み込みがありません。柔らかいマットレスでは、背骨が反り返る状態になり、軟骨の一部に力が入りやすいのですが、『エアウィーヴ』は背骨をまっすぐにして寝られることが特徴です」
だが、この商品、船出から順風満帆だったわけではない。エアウィーヴ社長・高岡本州さんは苦労を明かした。「作って最初の年は、2枚しか売れなかったんですよ」
もともとエアウィーヴは、釣り糸を作る機械を製造していたが、事業の方向転換をする。釣り糸素材を応用して、空気を編むようなマットレスパッドを作ったのだ。
「コールセンターも設置しましたが、全然電話が鳴らずに赤字続きでした。もう諦めるか……と思った時もありました。その後、北京オリンピックやバンクーバーオリンピックに多くの選手がエアウィーヴをわざわざ持参して、使用してくれたんです。うれしかったですね」
一流の選手が満足してくれている。それでいいじゃないかと高岡社長は思った。が、『エアウィーヴ』の評判は徐々に広がっていき、今では予約3カ月待ちの人気商品となった。美と健康の基本は睡眠。一流アスリートでなくとも、試してみる価値は大いにありそうだ。