全国各地で繰り広げられた着ぐるみキャラの“最後のお願い”行脚は、間近に迫る国政選挙さながらに熱を帯びていた!?
インターネット投票によるご当地キャラクターの人気ランキング「ゆるキャラグランプリ2012」の発表が、投開票を経て11月25日に行われる。
いまや地域に根差したマスコット・キャラクターとして市民権を得ている「ゆるキャラ」。その数は行政キャラ、企業キャラ、民間キャラまで含めると1500とも3000ともいわれる。猫も杓子もゆるキャラに熱を上げるのは、運営サイドが「濡れ手に粟」の経済効果を狙っているからに他ならない。
2006年にブームに火をつけた「ひこにゃん」(『国宝・彦根地筑城400年祭』キャラクター)は、原案者と地元自治体との間で著作権を巡るトラブルに見舞われながらも根強い人気を保持している。それはグッズなど関連商品の売り上げが約10億円(2009年)、経済波及効果は約330億円と試算されていることからも分かる。
さらに、ゆるキャラグランプリに輝けば、ひとたび人気は全国区になる。電子書籍『ゆるキャラ論~ゆるくない「ゆるキャラ」の実態~』(ボイジャー)の著者であるキャラクターコンサルタントの犬山秋彦氏がいう。
「昨年グランプリを獲った本県のPRキャラクター『くまモン』も、その後、テレビや雑誌などのメディア露出が増え、他県のイベントなどにも引っ張りだこ。グッズの総売上高は25億5600万円、一説によれば100億円以上の経済効果をもたらしたといわれています」
グランプリの影響力が大きいがゆえに、投票の加熱ぶりも凄まじい。「1日1票」というルールこそ存在するが、フリーメールのアドレスがあれば、ひとりが何票でも投票できてしまう仕組みのため、1日に数百から数千票を投じる熱心なファンもいるという。
中には、自動プログラムを駆使して投票する「ツワモノ」まで出る始末で、もはや純粋な人気投票とは言い難い状況になっている。
だが、前出の犬山氏は、自ら「戸越銀次郎」「大崎一番太郎」などゆるキャラのデザインに関わってきた当事者だけに、ゆるキャラビジネスの怖さも知っている。決して“ゆるくない”内情を明かしてくれた。
「行政や商店街のお偉方は、軽いノリでキャラクターを作ろうとして数千万円から億単位のお金を投じることも珍しくありませんが、活動を継続するためのランニングコストなど全く考えていません。広告宣伝費はもちろん、イベントに出れば着ぐるみに入る出演者やスタッフの人件費がかかるし、登場機会がなくても保管費用やクリーニング代その他、諸経費はバカになりません」
結局、独立採算が取れないゆるキャラたちは引退を迫られる。犬山氏は著書の中で、「ゆるキャラ界は過酷なまでに栄枯盛衰が繰り返され、死屍累々の戦場なのだ」と表現する。そして、行政キャラならば、赤字のツケは血税によって払わされることになる。
「低迷する日本経済を活性化させるために、少しでもゆるキャラ効果があるならその役割は大きいと思いますが、費用対効果も考えずに税金を投じるのはどうでしょう。そもそもゆるキャラは、たとえ無名であっても『積み立て保険』のように長期的に活動することで、知名度や信頼度が高まるものであり、やみくもに粗製乱造するよりも、ひとつのキャラを長期的に育て上げることに意義があるのではないでしょうか」(犬山氏)
今年のグランプリに輝くゆるキャラは、果たして息の長い人気を博すことができるのか。