テレビ局が使えるお金が最近ますます減っているという。今はどんな状況にあるのか。現場スタッフがテレビ業界の実態を語り合った。
日本テレビ系報道番組ディレクターA:ドラマ現場は制作費の削減で頭を抱えている。カネをかけない方針が、そのまま数字に出てしまっている。
フジテレビ系ドラマ番組プロデューサーB:フジテレビの『家族のうた』と日本テレビの『クレオパトラな女たち』がともに8話で打ち切られた。NHKの大河ドラマ『平清盛』がコケたのが救いで、“ドラマは冬の時代だよね”で済んでいますけど。
テレビ朝日系バラエティー番組プロデューサーC:春・夏ドラマが低調なのは業界の常識。夏は帰宅時間が遅くなって視聴者が少なく、寒くなると視聴者が増えるからね。出演者も秋・冬ドラマは話題になることがわかっていて、夏場のドラマの主演をやりたがらない。秋冬はギャラが安くても出演してくれるから、各局とも大物を使うことができる。
日テレA:フジテレビも月9ドラマ『PRICELESS』に木村拓哉を起用している。他にも米倉涼子、天海祐希、菅野美穂、深田恭子、沢口靖子と大物を起用したドラマが目白押しだが、どのドラマも強い女がテーマになっている。相変わらず医療現場やミステリーものが多く、いかに過去の話題作をパクっているか。
フジB:医療現場が多いのはコスト削減と無関係ではないでしょう? 病院内が主な舞台となっているから、ロケが少なくセットでスケジュール通り撮影を終わらせることができる。医療ドラマは過去のドラマのセットを使い回すのが常識だし、医療機器のセットは実際よりカネがかかっているように見えるからコスト削減にはもってこいだしね。
米倉涼子主演のテレビ朝日の『ドクターX』は手術室を使っているが、救命救急センターの研修医の成長を描いたTBSの『レジデント』はそれさえケチっているのか、すぐに処置室で開腹してしまう(笑)。
日テレA:最終回に平均視聴率40%をマークした松嶋菜々子主演の『家政婦のミタ』(日本テレビ)が悪例を作った。松嶋の衣装は帽子にダウンジャケットで、ほぼ全編が一軒家での撮影だった。カネを使わなくても数字が取れることを証明してしまった。
テレ朝C:ハイビジョンになってからドラマの大道具さんが泣いている。あまりに鮮明に映るのでセットのアラが見えてしまう。そのためミステリードラマなどは実際の建物で撮影することが多い。
そこで編み出したのが、地方都市でのロケ。地元の観光協会などとタイアップし、温泉ホテルなどを舞台に展開する。宿泊費や食事代は無料ですからね。2時間ドラマにこの手法が多いが、さすがにホテル側から殺人現場は建物の外という条件が出るようです。
日テレA:韓国ドラマはBSに舞台を移しそうだ。配給会社を通じて韓国のテレビ局から作品を買い付けて放送するが、自前で番組を制作するより低コストで固定ファン層がいる韓国ドラマは魅力が高かった。しかし、あまりに増えすぎて差別化できなくなった。フジテレビ低迷の原因は韓国ドラマに頼り過ぎたため。やはり手を抜いて数字は取れないということですよ。
※SAPIO2012年12月号