がんの治療法や検査法はここ10年ほどで多くの選択肢が増えた。そのうえ、メディアやネット上で、また口コミを通じて“あれが効くらしい”という情報が氾濫し、患者や患者の家族はいったいどの治療を選べばよいのかわからないという状況に陥っている一面も。
では、がんの治療法はどのように選べばいいのだろうか? がん患者と家族のための雑誌『がんサポート』の編集長で、がんの最新治療にも精通する深見輝明さんに聞くと、「まずは、標準治療を選択すべきです」と答えが返ってきた。
“標準治療”とは、臨床試験など最新の科学的根拠に基づき、治療の効果が証明されている治療法のこと。
「とにかくがんを治したいという一心から、最先端といわれる治療に飛びつきたがる人がいますが、それは誤解です。がんの治療技術はどんどん進歩していて、よりよい治療であると証明されたものが、逐次新しい“標準治療”になっています。ですから、標準治療こそ現在受けられるベストの治療と考えるべきです」(深見さん)
開発中の試験的な治療は臨床試験を積み重ねて効果が証明されれば、将来的には標準治療となる可能性もあるが…。
「あくまでも開発途上の治療ですから、現段階で必ず効果があるとは断言できません。うまくいくかもしれないけど、失敗するリスクも非常に大きいということを、まずは理解してください」(深見さん)
がんの治療は「手術」「放射線」「抗がん剤」が三本柱といわれる。標準治療では、早期のがんには外科的治療(手術)を、進行がんには外科的治療に加えて、放射線や化学療法(抗がん剤)を組み合わせるのが一般的。標準治療は治療の指針にもなるため、患者もその内容を知ったうえで医師と治療法を相談することが重要だ。
ただ、標準治療では治療できないがんがあることも事実。増殖を続け、転移の可能性もある“進行がん”や、臨床例が少なく標準治療が確立していない“難治がん”などがそれに当たる。
「標準治療が適応しないがん患者は、全体の半数近くになるといわれます。欧米で開発・発売された新薬が、日本で承認されて標準治療になるまでに長い時間がかかる“ドラッグ・ラグ”もその一因でしょう。標準治療が適応しない場合、医師はリスクも説明したうえで、“先進医療”や現在、開発中の試験的な治療を提案することもあります」(深見さん)
ここでいう“先進医療”とは、医療機関が先進医療として厚労省に申請し認可を受けたもので、将来、保険診療の対象にするかどうか評価する段階にある治療のこと。それを行うことが認可された病院で受けることができるが、その医療にかかる費用は自己負担。
しかしそれ以外の検査や治療については保険がきく。ただし、最新といわれる治療法には、“先進医療”の認可を受けていない臨床試験段階の治療もある。
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号