投資情報会社・フィスコ(担当・村瀬智一氏)が、株式市場の11月12日~16日の動きを振り返りつつ、19日~22日の見通しを解説する。
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先週の日経平均は大幅に上昇。政権交代への思惑がトリガーとなり、週末には11月7日以来の9000円を回復した。
週前半は下値模索の相場展開が続いた。米国では「財政の崖」への不安からNYダウは大幅下落、欧州ではギリシャの財政問題などが上値の重石となり、13日には8619.45円と10月半ば以降の上昇部分を帳消しにする局面もみられた。
しかし、14日の野田首相と安倍総裁との党首討論では、首相は「定数削減確約なら16日に解散する」と発言。衆院総選挙は12月4日公示、16日投開票に決まるなか、政権交代による期待感が高まった。15日には安倍総裁が都内の講演で、無制限の金融緩和や年2~3%の物価目標の設定などに言及。強力な緩和圧力を織り込む形で円売りが加速し、円相場は4月27日以来の1ドル81円台をつけた。
緩和期待や自民党が主張する公共投資拡大への期待などを背景に、建設・住宅・不動産関連などが物色されるなか、円売りの加速によって輸出関連など円安メリット株への物色が強まった。米国では引き続き「財政の崖」を巡る不透明感から下落基調が続き、欧州では7-9月期のユーロ圏GDPが前期比0.1%減と2四半期連続の減少によってリセッション(景気後退)に突入との見方となるなか、日本株市場は景気敏感株を中心に逆行高をみせた。
日経平均は政権交代への期待から10月半ば以降の保ち合いレンジを回復した。一目均衡表では雲のねじれのタイミングでトレンドが出やすい周期だったが、いったん下振れした後に、雲を一気に上放れている。他のテクニカルシグナルも好転しており、先高期待が高まることになりそうだ。
ただし、保ち合いレンジを回復したことにより、目先的な達成感も意識されるところ。今週は米国ではサンクスギビング(感謝祭)、日本でも勤労感謝の祝日による連休を控えており、トレンドは出難い状況であろう。
また、国内では政権交代に対する期待感から一段の緩和政策、これによる円安トレンドが相場をけん引することになるが、海外情勢は財政問題に加えて、中東の地政学リスクも警戒されてきている。逆行高に慣れていない日本市場でもあり、神経質な局面もありそうだ。
ただ、11月15日に向けた「ヘッジファンドの解約45日前告知ルール」への警戒要因は和らいでいるほか、「財政の崖」への行方についても、サンクスギビング明けとなる11月下旬からが本格的な協議とみており、しばらくは落ち着きをみせてくる可能性がある。
ギリシャ支援については、ドイツ議会が今週にも採択する可能性があると伝えられており、20日のユーロ圏財務相会合、22~23日のEU首脳会議で警戒感が和らぐことが期待される。ユーロ圏財務相会合で決着がつくようだと、ユーロ高から円安トレンドが加速する可能性もありそうだ。
物色の流れとしては、来月の総選挙に向けた1か月間は、各政党によるマニフェストなどに関心が向かいやすい。自民党が政権を握るとの見方が大勢となるなか、円安トレンドが続く可能性があるため、輸出株など円安メリットを意識した景気敏感株への物色に。
また、欧米動向が気掛かりではあるが、海外ファンド等はこれまで日本に対してはアンダーウエイトを継続していたとみられる。パフォーマンスの観点から、ウエイト調整に伴う資金流入が期待されるため、インデックス連動の大きい銘柄に注目。そのほか、高値警戒感から手控えムードが高まるようだと、景気敏感のなかでも、鉄鋼や海運といった、売られ過ぎているセクターや銘柄への水準訂正の動きに向かわせることになろう。