中国で有名な酒といえば、茅台(マオタイ)酒や紹興酒だが、最高指導者に就いた習近平共産党総書記の人気の高まりとともに、つい数年前まではまったく知られていなかった「習酒」が売れに売れている。
習氏は15日、予想通り党トップの党総書記と軍トップの党中央軍事委主席に選ばれており、来年春の全国人民代表大会(全人代)で国家主席に選ばれるのは確実。習氏の人気は10年間だけに、製造元の酒造会社は2015年に100億元(約1300億円)の売り上げを見込んでいる。
習酒は貴州省習水県が原産地で、アルコール度数は53度もある、いわゆる「白酒(パイチュー)」と呼ばれる中国酒の一種。原料は高梁(こうりゃん)で、名水で名高い「赤水河」の水が用いられ、1952年に発売された。
赤水河の水は名酒で有名な貴州茅台(マオタイ)酒にも使われており、習酒の製造元が1998年に貴州茅台酒造に買収されている。
当時、習酒は地元以外の人にはほとんど知られていなかったが、2007年秋の第17回党大会で習氏が「次期最高指導者含み」で政治局常務委員会入りしたことから、習酒も一躍脚光を浴びて、製造が追いつかないほど売り上げが伸びた。
貴州茅台酒造の習酒有限責任公司のホームページによると、今年1月から10月の売り上げが2年前の2010年の2倍以上の23億元(約300億円)に急増しており、年内に30億元(約500億円)に達する勢いだ。
同社は中国の国営テレビである「中国中央テレビ局」のゴールデンタイム枠で3000万元(約4億円)もの広告料を支払ってCMを出しており、宣伝効果は抜群で、「売り上げは急激な伸びを示している」(同ホームページ)とほくほく顔のようだ。
乾杯するときの決まり文句は「一気に飲み干せば、わたしもあなたも習派だ」というもの。
習氏は約25年間もの地方勤務を経て、上海市トップから一気に3段跳びで最高指導部入りするほどの運の強さを持っていることから、せめて習酒を飲んで、幸運をつかみ取ろうという庶民の願いが習酒人気に拍車をかけているようだ。