民主党の常任幹事会では「年内解散せず」を決定したにもかかわらず、党首討論で突如解散を宣言した野田佳彦首相。当然、選挙恐怖症の民主党内は大混乱に陥り、怨嗟の声が渦巻いている。反執行部派のベテラン議員は、総理の除名を主張した。
「いま選挙を打つのは自民党に政権を渡すための明らかな反党行為だ。党規約に代表解任の規定はないが、党の決定に背いて消費増税法案に反対した小沢一郎氏らと同様に、反党行為で処分はできる。両院議員総会で除名し、新しい代表を選んで選挙に臨むべきだ。野田を公認すべきではない」
党内から総理除名の声が起きるなど、この党は政権交代からわずか3年で崩壊したも同然である。
12月16日投票の総選挙の結果、民主党は大敗し、野田首相が退陣することは誰の目にも明らかだ。だが、野田首相に待ち受けているのはそれだけではない。仮に自身が当選できても、違憲訴訟が起きるのは確実だ。
政治学者の岩井奉信・日本大学教授が指摘する。
「衆院の1票の格差をめぐっては最高裁が違憲状態という判決を出し、具体的な制度見直しの立法措置を求めている。それなのに格差是正をしないまま総選挙が実施されれば、次は選挙無効判決が出される可能性がある。その場合、1票の価値がとくに低い複数の選挙区の当選が無効になるだろう。現在、小選挙区で1票の価値が最も低いのが野田首相の千葉4区であり、野田さんが当選しても無効になる可能性は十分あります」
これについては、横路孝弘・衆院議長も年内解散なら選挙無効判決もあり得ると警告する文書を議院運営委員らに提出している。
野田首相は国会で、「増税法案が成立しなければ議員辞職するつもりだった」と語ったが、自爆解散で自身の当選が無効になるとすれば国民にウソをついて増税を強いた因果応報である
※週刊ポスト2012年11月30日号