便秘・下痢予防、内臓脂肪減少、コレステロール値の抑制、アレルギー・アトピーの抑制、インフルエンザ予防、花粉症の症状緩和、睡眠障害の改善……。これらはヨーグルトを発売する乳業メーカー各社が、独自の乳酸菌研究から見出した健康効果だ。
ヨーグルトといえば、主に整腸作用の効果が一般的に知られていたが、近年「菌が生きて腸まで届く」など、特に機能性をうたった商品がズラリと店頭を埋め尽くしている。この「機能性ヨーグルト」が牽引する乳酸菌市場は、2011年4月~2012年3月で3000億円を突破。今後も1~2%増の拡大は必至と見られている。
「今年の初めに、明治の『R―1』ヨーグルトがインフルエンザ予防になるというテレビ番組を見て以来、子供に毎日食べさせているのですが、ずっと品薄なんです。近所のスーパーはいまだに『お1人様2個まで』の制限があり、夕方に行くと売り切れている日も多い」(千葉県在住の40代主婦)
一過性の人気で終わらない需要の急拡大に、メーカー側はようやく増産体制を整えた。明治は守谷(茨城)など主力工場の生産能力を1.5倍に高める。その他、雪印メグミルクや森永乳業も相次いで機能性ヨーグルトの増産を発表した。
では、市販されているヨーグルトに含まれる菌はどんな種類や効用があるのか。メーカーや研究機関の発表をもとに、関連商品とともにまとめてみた。
■1073R―1乳酸菌/「明治ヨーグルトR―1」(明治)
免疫活性化作用がある多糖体を産生する乳酸菌。「NK」活性が高まり、インフルエンザの発症が抑えられたという報告も
■LG21乳酸菌/「明治プロビオヨーグルト」(明治)
胃炎や胃潰瘍、胃がんなどを引き起こすとされるピロリ菌を減少させ、胃粘膜の炎症を改善する作用が確認されている
■LKM512ビフィズス菌/「メイトーLKM512」(協同乳業)
「おなかの中で増える」ビフィズス菌。便秘改善など腸内環境を改善するほか、アトピーのかゆみ抑制作用なども確認された
■ガゼリ菌SP株/「ガセリ菌ヨーグルト」(雪印メグミルク)
小腸に多く見られる乳酸菌で、「腸に長くとどまる善玉菌」といわれる。内臓脂肪減少や血中コレステロールの低下作用、ストレス軽減効果など確認
■乳酸菌シロタ株/「ソフール」(ヤクルト)
生きて腸まで届く乳酸菌。腸内でビフィズス菌を増やす働きがあり、大腸がんや膀胱がんのリスクを減らす作用があるとの報告も
その他、小岩井乳業とキリンホールディングスが共同開発した風邪やインフルエンザ予防に効果的な「プラズマ乳酸菌」配合商品の発売や、サッポロビールが睡眠障害の改善効果があるとされる「SBL88乳酸菌」の商品化も控え、各社が注力する機能性ヨーグルトは“増殖”する一方だ。
こうして見てみると、ヨーグルトは万能食品のように思えるが、都内の内科医はブームの過熱ぶりに冷静さを促す。
「確かにヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌は腸内環境を整えて善玉菌を優勢にして、その結果、免疫力アップの効果が期待できます。でも、それぞれ菌の種類によって特徴がありますし、人によって腸内細菌の状況も異なります。ヨーグルトさえ食べていれば風邪もひかないし、病気にもならないといった考え方は誤りです」
トクホ(特定保健用食品)をはじめ、人々の健康志向に訴求した食品の話題が尽きない。しかし、あくまで食品は医薬品と違って日々の健康をサポートする一助にしかならない、ということを改めて認識することが大切だ。