いまやアメリカを抜いて世界最大の兵員数を誇る中国。それは日本の10倍である。質より量で世界を威圧してきた中国と日本の兵力の現状を比較検討してみよう。
世界第2位の作戦機保有数を誇る中国空軍の近代化はすさまじく、近年、ロシア製の最新鋭「Su‐27(J‐11)」、対地対艦攻撃もできる「Su‐30(J‐16)」などに加え、斬新なスタイルの中国製戦闘機「J‐10(殲10)」の配備が急速に進み、現在の第4世代戦闘機保有数は565機に達している。
J‐11はアメリカのF‐14、F‐15、F‐16戦闘機に対抗して造られたロシア製Su‐27を中国でライセンス生産したもので、J‐16はそれをさらに改良、洋上の敵艦隊への攻撃が可能な航続距離の長いマルチロールファイターとして設計された。
そこに第5世代のステルス戦闘機「J‐20(殲20)」が登場した。レーダーで捕捉しにくいステルス性能が高く、米空軍の第5世代ステルス戦闘機「F‐22」戦闘機に対抗して製造されたといわれる。
軍事ジャーナリストの井上和彦氏が指摘する。
「こうした第5世代機が登場してきた今、航空自衛隊の主力戦闘機F‐15Jはすでに旧式化しつつあり、優秀なパイロットの技量でそれを補完しているのが現状です。したがってF‐15Jの飛躍的な近代化改修と、第5世代戦闘機の導入を急ぐ必要がでてきています」
人民解放軍の中で最大の陸軍。その代表的装備といえば戦車だ。中国はがむしゃらに戦車の技術向上を図っている。だが、自動車製造技術が確立した国でないと、まともな戦車は造れない。
「もし、陸上自衛隊と衝突することがあっても、中国の99式戦車は、日本が世界に誇る陸自10式戦車や90式戦車の敵ではありません」(井上氏)
総じて技術的には日本がまだ上と考えてよさそうだが、中国軍の兵器は、近年になって見違えるほど近代化した。その本当の実力については、実戦経験がないため不透明だという見方が多いが、軍事ジャーナリストの清谷信一氏は甘い見通しは禁物だと警告する。
「中国の強みは自国で造った 兵器を輸出していることです。実戦経験がなくとも、輸出先が実戦投入すればそのデータが得られ、問題を指摘されれば何度でも改良できる。精度はどんどん高くなっていると考えるべきでしょう」
中国が量ばかりでなく質でも日本を凌駕する日が訪れる可能性は十分ある。そうなる前に何をなすべきか、その時にはどう対応するかを真剣に考えておかねばならない。
※SAPIO2012年12月号