誰にも訪れる最期の時。だが、遺された者は悲しみに浸る余裕もなく、葬儀や墓の問題、遺産整理などに追われることも多い。10月2日に41歳の若さで亡くなった金子哲雄さんは病いと闘いながら、流通ジャーナリストとして自分の葬儀を自分でプロデュースした。
彼が死の直前まで最後の力を振り絞って書き上げた『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館刊)には、我々も学ぶべき「命の始末」のつけ方がつまっている。 自分の死を目前にした「最期への備え」。しかし、苦しい病気と向き合っていた金子さんは、こうした作業の最中に意外にも安らぎを感じていたそうだ。
稚子夫人は、金子さんの手記のあとがきで、こう振り返っている。
「今でも時折、金子の指示に従っているような気がすることがあります。そして今もなお、私は金子に守られていることを、日々痛感する毎日を送っています。金子は亡くなりましたが、でも、そこから金子との新しい関係が始まったことが、よくわかりました」
「命の始末」を終えた、金子さんは、最後の日にこうつぶやいたという。
「自分の人生に90%満足している。もうこれでいいよ。本当にありがとう」
死に顔は、この世に悔いを残していない、おだやかなものだったという。
※週刊ポスト2012年11月30日号