聖なる夜に大切な恋人や家族と一流ホテルでゴージャスに過ごす――。そんなクリスマスはバブル時代の遺物かと思いきや、全盛期を彷彿させるほど今年の予約状況は堅調だという。
「旧御三家」と呼ばれる老舗ホテルのクリスマスプランを見てみると、小学生以下の子連れならサンタクロースの部屋を訪問できるプラン(帝国ホテル)や、公認サンタがプレゼントを部屋に届けてくれるサービス(ホテルニューオータニ)、クリスマス仕様にライトアップされた日本庭園を前に特別ディナーが味わえるコース(ホテルオークラ)など、あの手この手の演出でもてなしてくれる。
しかし、いずれも現時点で空きはわずかで、部屋のタイプによっては、既に満室となっているプランも多い。長引く不況の中、なぜこれほどの盛り上がりを見せているのか。
『週刊ホテルレストラン』元編集長でオータパブリケイションズ専務取締役の村上実氏が分析する。
「景気自体は悪いながらも、高品質の商品やサービスにはお金を惜しまない富裕層が戻ってきて、徹底的に低価格を追い求める人たちと市場は2極化しています。また、今年のクリスマスは『3.11』の控えムードから反転、イブが3連休の最終日にかかる“当たり年”でもあるため、クリスマスは特需になると見込んだホテル業界の素早い営業戦略が奏功しました」
また、ホテル業界が提案する「クリスマスの過ごし方」が時代とともに変化していることも好調な予約率につながっている、と村上氏はみている。
「1994年からパークハイアット、ウエスティン、フォーシーズンズという『新御三家』のホテルが進出して以降、外資系ならではのクリスマスイベントが行われて徐々に定着してきました。それまでは2人きりで部屋にこもって豪華ディナーを食べるクリスマスが定番だったのが、パーティールームで大人数のクリスマスイベントが開催されるようになり、ゲスト(客)同士のコミュニケーションが生まれて人気となりました」
その流れは、2000年代に入り、シャングリラ、ペニンシュラ、マンダリン、リッツカールトン……という第3次といわれる外資系ホテルのムーブメントで確立された。恋人や家族と“しっぽり”もいいが、皆で“ワイワイ”の雰囲気がクリスマス需要を復活させたのである。
「一緒に過ごすのは恋人や家族だけではありません。2010年に帝国ホテルが3名1室利用で低価格の宿泊プランを出して“女子会”ブームに火をつけたように、特別なイベントを友達と語り明かしたいという予約客も根付きました」(村上氏)
さて、年末の好調ぶりを維持したまま、来年のホテル業界も明るい1年となるのか。
「来年はなんといっても東京ディズニーリゾート(TDR)が開園30周年を迎えます。そこで、アンバサダーホテルが2月に大規模なリニューアルをして日本で初めてミッキー&ミニールームもデビューするなど、話題は尽きません。ホテル業界の景気回復、その最大の牽引役はディズニーとなるでしょうね」(村上氏)
やはり、年中イベント以外で高い稼働率をキープできるのは、テーマパークや名所に程近いホテルということになろうか。