空前の大ブームとなっている美熟女AV。その誕生秘話について、AV監督の溜池ゴロー氏と、新ジャンルを切り開いたAVメーカー「ソフト・オン・デマンド」の創業者である高橋がなり氏が語り尽くした。
――美熟女AVは、アダルト業界の大潮流になったどころか、美魔女や熟女好き若手芸人など“熟女ブーム”として、一般社会にまで影響を及ぼしています。
高橋:すべては1999年に溜さんが、現夫人の川奈まり子さんの主演で制作した『義母 まり子34歳』から始まっているんですよね。
溜池:あのときソフト・オン・デマンド(SOD)の社長だった、がなりさんにゴーサインを出してもらえなかったらこのブームはなかったかもしれません。
高橋:当時の溜池監督は“美少女単体モノ”をバンバン撮っていた。
溜池:ロリコン系で巨乳でないとAVは売れない――みたいな神話ができていて、熟女ジャンルは完全にキワモノ扱いでしたからね。
高橋:実際、くたびれたオバハンやシワだらけのババアを、思いっきり汚い映像と演出で作品にしちゃってた。あれじゃセールスに結びつくわけがない。
溜池:かつての熟女作品は、監督の目線が高すぎました。熟女のエロさを引きだすどころか、グロさを追求しているかのように思えた。僕はそんな状況にかなり不満を抱いていたんですが、来る仕事は100%が美少女モノ。ロリコンと対極の趣味の僕にとっては苦痛でもありました。
高橋:だからオレが「溜池監督、好きなものをつくっていいよ」って声をかけたら眼を輝かせていたんだ。
溜池:これが最初で最後のチャンス。失敗したら引退する決意でした。
高橋:当時はSODのAVがガンガン売れていたし、3本のうち1本くらいはダメなのがあってもいいかって感じでした。
溜池:全裸シリーズ(※1)が大ヒットする一方で、『地上20メートル空中ファック』なんて世紀の大コケ作品もありましたもんね。
高橋:その話はしない約束だろ(爆笑)。オレは、既存の大メーカーがこぞってNG出してた分野に挑みたいという溜池監督の姿勢を買ったんですよ。だから、キャスティングから制作費まで一切を任せることにしたんです。その分、責任も感じてもらえるだろうし。でも正直いって、オレ自身が美熟女のどこがいいのか、よくわかんなかったんだよね。
溜池:……がなりさんが全然期待してないのは伝わってきました。
高橋:だけど『義母~』のプレビューを観て、溜池監督はすごい作品を撮ったなと思った。だって最初の30分、まったく裸やセックスの場面が出てこないんだもん(笑い)。延々と川奈さんが演じる、いやらしき年上の女の寝姿やお掃除する様子、それにわき毛を処理するシーンが続くわけですよ。これは熟女フェチでしか演出できない映像。監督がよろこんで作っている作品は、必ずユーザーにも伝わります。商業的な意味でも成功を確信しましたね。
――その『義母 まり子34歳』は、半年で1万本を売る大ヒットになり、美熟女AVの時代が到来します。
溜池:だけど、確かリリース直後はSOD作品のランキングで最下位だった(笑い)。それが、半年後にはトップに躍り出ていたんです。やはり美熟女が浸透するには時間が必要でした。
高橋:メーカー側としては、それでもまだ半信半疑でした。ひょっとしたら溜池監督のビギナーズラックかもしれない。だから僕は、もう一回川奈さんを使って、今度は1作目のドラマとは違うドキュメントで作ってほしいとお願いしたんです。それが『美熟女まり子プライベートセックス~48時間の愛』。そうしたら、これも売れた。監督と女優の実力にプラスして、美熟女市場の存在が実証されました。
※週刊ポスト2012年11月30日号