ライフ

絶縁状態の親の死を突然知らされた時の対処を44歳女性述懐

 今、“お墓で困っている人”が増えている。「田舎にあって荒れ放題」「収入が低すぎて墓が買えない」「一人っ子同士の夫と妻なのだが…」と様々な理由で頭を悩ませる人が多い中、絶縁状態の母親の死を知らされた女性はどうしたか? 作家の山藤章一郎氏が迫る。

 * * *
 3歳で別れた「ぶっちゃけ他人」の母が、京急蒲田駅に近いアパートで死後10日目に発見された。70歳だった。娘のあたしは44歳。放送局勤務OL未婚。認知症を患っていた父は今春死亡。

 母は弟妹とカネでもめて、絶縁状態。生活保護で暮らしてきた。墓は買えなかった。だが、別れた父は墓を買い「一緒に入ったらいいさ」とかねて提案してくれていた。あたし・大塚良子さんの話。

「まっウチの場合は、そういうわけでお墓はある。でなきゃ、あたしゃ未婚、母離婚。お墓もなくて宙に浮く。こんな人、全国にすごいいるよね。あたし30代の頃、葬式やお墓なんて考えたことなかったけど、恐ろしいわよ、大変よ。

 母は転んで骨折し、動けなくなって死んでました。隣りの部屋のおじさんが発見してくれました。警察があたしに連絡くれました。あたし検死に立ち会いました。顔なんか溶けちゃってて、臭くて。警察から葬儀屋さんの車で」

 のち、なんとか雑事を済ませた。すると、ひとりきりで身寄りのないあたしが死んだら、誰があたしの骨を墓に納めてくれるのかという疑問に、良子さんは行き当った。彼女はいかに処したか。

「はい、母はどうやら誰も知り合いなんていなかったみたいで、完全密葬の直葬。警察から、直に斎場へ。坊さんの拝みも、なし。火葬場で焼いてる間待つ控室料を入れて生活保護者パックの20万円で済みました。大田区が直接、搬送した葬儀屋、焼いた斎場に支払ったみたい。それから部屋の片づけ。最後だからと思って業者にやってもらったの。17万円」

 衣類、食器から箪笥まで。大きいものは部屋で壊して片付けた。次いで、ネットで〈位牌と戒名パック〉を売っている寺を見つけた。2万円。戒名入りの位牌が送られてきた。別れた父が「お前らもどうだ」と離婚した母に言ってくれた通り墓を一緒にした。40年前に別れた家族がぐるっとめぐって土の中で一緒になる。

「皮肉よねえ。あたしが婿養子とって、男の子生まないとお家は断絶。あたし死んだら、誰があたしをあの墓に入れてくれるんだろ。下手すると、〈行旅死亡人〉(※行き倒れの人)と同じでしょ。官報に載って無縁仏。国勢調査にさあ、お墓の場所を書き込む欄があればいいのにね。死んだら警察が見てくれるの」

 大塚さんの母も、3歳で別れた娘の連絡先を部屋に記していなければ、この世とはつながりのない〈行旅死亡人〉だった。

※週刊ポスト2012年11月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」に同行された愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、皇室とご自身の将来との間で板挟み「皇室と距離ができればこうした仕打ちがある」という前例になった眞子さんの結婚 将来の選択肢を“せばめようとする外圧”も 
女性セブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
ロスで暴動が広がっている(FreedomNews.TvのYouTubeより)
《大谷翔平の壁画前でデモ隊が暴徒化》 “危険すぎる通院”で危ぶまれる「真美子さんと娘の健康」、父の日を前に夫婦が迎えた「LAでの受難」
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン