2011年に発売された前作『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)が、100万部のミリオンセラーとなり、一躍、時の人になった近藤麻理恵さん。その“こんまり”が、このほど第2弾となる『人生がときめく片づけの魔法2』を上梓した。
そのものに“ときめく”かどうかで、「捨てる」を終わらせたら、一気に完璧に片づける。そんな“こんまり流”整理収納方法は、インパクト大でありながらシンプルで、瞬く間に人々の心をつかんだ。
実は片づけを通じて、彼女自身にも大きな気づきがあった。それは家族との絆。これまで、両親とは不仲というほどではなかったが、あまり相談ごとをしない自立心の強い娘だった。
「幼稚園児のときからずっと片づけをして、人よりモノとしゃべっているような子供だったんです(笑い)。中学受験をするときも、親にも相談せずに自分で学校を決めて願書をもらってきましたし、大学も推薦入試だったんですが、入学が決まってから親には事後報告。否定されたり、文句を言われたりしたくなかったんですよね。
自分でしっかりやって、うまくいったら事後報告がよかった。だから、私の仕事も、話題になるまで何をやっているのか、両親はわからなかったみたいです。一度、報告したことはありますが“そ、そう…”みたいな反応でした」(近藤さん・以下同)
そんな彼女が仰天する事件が起こる。1作目の本が出て、彼女の名前がじわじわ有名になったある日、父親から突然、片づけのレッスンを依頼するメールが来たのだ。
「びっくりしました(笑い)。生徒として親を見るのは不思議な感じでしたし、目の前で父が“ときめき”でものを選んでいるのを見て、男性でもこの感覚がわかるんだって新鮮でした。レッスンの時はお互い敬語でしたね(笑い)。
父はマメできれい好きなんですが、とにかくモノが捨てられない人。10年間、私の“捨てたらいいのに”という声に抵抗し続けてきたんです。でも2日で片づけが終了。とても満足してくれました。私もうれしかったです。いちばんの親孝行ができた気がしましたね」
これまで“さぞかしこんまりさんのご実家はきれいなんでしょうね”という声に、言葉を濁すばかりだったという過去も、今は自信を持ってうなずけるそうだ。
「母親はすでに実践していたんですが、実をいうと、兄も妹も最近までかなりの汚部屋に住んでいたんです(苦笑)。妹は父の姿を見て感じるものがあったらしく、自力で見事なときめき部屋にしていました。
兄はコレクターで、フィギュアとかもあるんですけど、今の部屋にまったく不満じゃないタイプ。楽しく健康的に仕事をして、社会生活を営んでいるので、今は、それはそれでいいかな、と思います。私から見たら、どうなの? と思うコレクションも、実際、触れてみると愛着がわいてくるんですよね」
父へのレッスンを機に、実家に帰る機会も増え、家族の会話がグンと増えたという。そしてこの春は、15年ぶりに家族で花見にも出かけた。
「そのとき、母が用意してくれた桜柄の小さなグラスで桜色の甘酒を飲んだのですが、それがとてもおいしくて。その日、帰宅すると家の雰囲気がいつもと違う気がしたんです。
何だろうと思ったら、ふと昼間の桜のグラスが頭に浮かび、そのときわかったんです。どんなに好きなものでも、大切な人との思い出を持ったものには敵わないと。私が本当に欲しかったのは、家族と過ごす時間だったと気づいちゃったんです」
片づけのプロとして寝食を忘れ、仕事に没頭してきた彼女にとって、その気づきは大きなことだった。その証拠に、彼女の雰囲気からは幸せオーラをひしひしと感じられたのだ。片づけが本当に人生を変えてしまうとは!
「周りの状況がどうであれ、片づけると漠然とした不安がなくなると思います。中には転職や離婚、プロポーズされるなど大きな変化を経験するかたもいますが、ほとんどのかたは、旦那さんのよさを再認識するとか、今の仕事がやっぱり好きだと思えるとか、現状に満足して自信が持てるようになります。これからもそんなお手伝いがしたいですね」
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号