「夏はエアコンに頼るが、冬の暖房ではエアコンはあまり使わない」――。
そういう人は意外に多い。「思ったより暖まらない」「電気代がかさむ」――。多くの人にそう思わせるのには理由があった。
夏にエアコンの室外機の前に立つと、外気温よりも温かい風が吹き出してくるが、冬はその逆。外気の熱を取り込んで室内機から暖風を送るため室外機は外気温よりも温度が下がる。そのため熱交換器に霜がつくことが原因となるのだ。
「霜がつくとこれを除去する霜取り運転が働き出します。このため、暖房運転を一時的に止め、その熱を使い、霜を除去しているのです。運転再開までにせっかく暖めてきた室内温度は低下していました」
解説するのはパナソニック商品グループ・エアコンチーム主事でエアコンの商品企画を担当して7年の宮代達(とおる)だ。
効率的に部屋の温度を調整するために導入されたのが人感センサー。人が近づくと防犯ライトがついたり、トイレのドアを開けただけで瞬時にパッと明かりがついたりするものと同じ技術の導入だった。
しかも人がいるかどうかを識別するだけではない。その人が動いているのかどうかまでもセンシングする。動きや活動量が多ければ、その人の体温は高まる。反対に、じっと座っていたりする人は体温が下がる。
こうした個々の体感温度まで予測し、必要に応じて送風することで、エアコンのムダはますます省かれていった。
そして、冬でも快適なエアコン暖房が登場。これはエネチャージ技術によって実現された。実は、この技術、既に20年ほど前に実用化のメドがたったものだった。
「研究所では常に最新の研究が行なわれています。その中にはあまりの先進性に驚かされる凄い技術もある。ところが、部品が高価だったり、安定供給できなかったりという理由ですぐには実用化できないこともある。私自身も研究所のスタッフから提示された“凄い技術”をやむなく却下することもありますから」
エネチャージ技術は、そうした「お蔵入り」しそうなものだった。
その原理はこうだ。エアコンの稼働中、これまで排出していた熱を内部に設置した蓄電ユニットにためておき、その熱を霜取り運転に活用するというもの。これで暖房運転を止めることなく、霜取りが可能になり、暖房運転が中断するということがなくなった。
冬でも快適暖房のエアコンは、パナソニックが展開する省エネ家電群「エコナビ」「スマート家電」を牽引し、ヒット商品となった。
現行の最新機種『CS-X403C2』では、スマートフォンで外出先から電源をオフにする機能がついた。外出中、ペットのためにエアコンをオンにしている人にはありがたい機能だ。
これまでのリモコン操作ではできなかった便利な様々な機能を、スマートフォンとの連携により実現させ、卓越した省エネを実現させた。(文中敬称略)
●取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2012年11月30日号