日本人のテレビ離れが指摘されるが、10年前と比べると全日視聴率では日テレやフジは2%以上も落ち込んでいる。視聴率の低迷で本業が頭打ちのなか、テレビ局の経営の中でますます存在感を増しているのが「副業」だ。
フジテレビの「お台場合衆国」、日テレの「汐博」など、テレビ局がイベント事業に力を入れているのはご存じだろう。その傾向はなお強まっている。
フジは東京・上野の森美術館で開催中の『ツタンカーメン展』を主催し、大阪会場も合わせると累計来場者数は160万人を突破。
同社の昨年度のイベント事業収入は171億円で、低迷する視聴率とは裏腹に絶好調だ。イベント事業の成功に味を占め、近年は各局ともさらなる事業拡大に突き進んでいる。
フジは、「グリー」と提携してカードゲーム事業に乗り出した。また「ストーリア」という法人を設立してウェディング事業にまで手を広げている。
一方、日テレは番組関連グッズショップ「日テレ屋」を始めとした物品販売事業が今年度上半期だけで223億円の売り上げを記録。フジと同様、「グリー」と組んでソーシャルゲームへも参入した。「2年前、広告外収入拡大のため社内にもうけられたインキュベーション委員会の活動の成果だ」と日テレ局員はいう。
「振り向けばテレ東」という低視聴率の本業に見切りを付けたのか、不動産に舵を切ったのがTBS。年間150億円を不動産事業で稼ぎだし、自らが事業主となった全133戸の高級マンション『赤坂ザレジデンス』もほぼ完売だ。
テレ朝もネット配信テレビ「テレ朝動画」が好調で、アイドルグループ『ももいろクローバーZ』の関連商品が大ヒットしている。
実は、視聴率が落ち込む一方で各局は増収増益を続けている。全局で売上増を果たした昨年度同様、今年度の通期予想でも、日本テレビが売上高3230億円(経常利益384億円)と過去最高に迫る数字。TBSも同3517億円(同165億円)と、前年比50億円増の数字を見込んでいる。
結局のところ、これだけの利益があげられるのは、公共の電波を自社のサイドビジネスの宣伝・集客に流用する“タダ乗り”商法で、電波利権をフル活用して儲けているからに他ならない。こうした副業に心血を注ぐのではなく、国民のためにより質の高い放送を心がけることが責務だろうと思うのだが。
※週刊ポスト2012年11月30日号