投資情報会社・フィスコ(担当・村瀬智一氏)が、株式市場の11月19日~22日の動きを振り返りつつ、26日~30日の見通しを解説する。
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先週の日経平均は上昇。週末には9月戻り高値を突破し、5月2日以来の9300円を回復した。衆議院解散以降、市場は次期政権を握るとみられる安倍自民党総裁の発言に注目が集まるなか、一段の緩和政策への期待、これによる為替の円安傾向が追い風となった。
また、ゴールドマン・サックスのジム・オニール氏が「自民党の復権」「円高から円安傾向に転換する」と指摘。モルガン・スタンレーの為替ストラテジストらは、来年の経済見通しで13年末までに、ドル・円は90円に下落する見通しを示すなど、円安のトレンドが鮮明になりつつある。
この流れを受けた為替市場ではドル・円が82円台半ば、ユーロ・円は106円台に乗せるなど、いずれも4月以来の円安水準を付けている。円安メリットが意識されるトヨタ<7203>、キヤノン<7751>、ニコン<7731>など景気敏感セクターのコア銘柄を中心にリバウンド基調が強まり、日経平均を押し上げる格好となった。
東証1部の売買代金は衆議院解散・総選挙が決まった11月15日以降、1兆円を超える状況が続いている。日経平均は急ピッチの上昇に対する過熱感や5月の急落時の真空地帯を回復し、今後は戻り待ちの売り圧力なども意識されるところ。安倍トレード(株買い・円売り)と言われる商いも一巡したとの見方がされている。
ただし、過熱を冷ます格好での調整を交えつつ、来月の総選挙までは政策期待、特に円安トレンドを手掛かりにした物色の流れが続くとみられる。また、自民党の安倍総裁が示した金融政策に対しては実現性など賛否両論があるものの、概ね海外勢の反応は良い。一方で新指導部が動き出した中国については、上海指数の弱いトレンドが続いている。この状況からみても、アジアを対象としているファンドなどは、アンダーウエイトであった日本へのリバランスの動きを強めてくると考えられる。
そのほか、欧州では21日のユーロ圏財務相会議でギリシャへの追加支援の条件について合意に達することができず、26日に再協議することとなった。しかし、一部報道を受けて瞬間的な混乱はみられたが、支援先送りに対する各国の市場の反応は限られるなか、円安のトレンドは継続している。
今週もギリシャ支援報道で振らされる局面も意識されようが、為替相場を睨みながらの景気敏感セクターに対する物色は継続。また、米感謝祭後の週末にあたるブラックフライデーと週明けのサイバーマンデーでの年末商戦の動向が注目されるため、「iPhone5」「iPad mini」の売上に関心が向かいやすく、アップル関連などハイテクセクターへ物色が向かいやすいだろう。
また、円安の流れが一服したとしても自民党の政権公約などを手掛かりに、緩和期待による不動産や公共投資関連など内需株への循環によって、物色意欲は衰えないとみておきたい。
ただし、海外勢がシェアを握るなか、オープニング・ギャップで上昇した後はこう着感の強い相場展開も続きやすく、強いトレンドのなかでも手掛けづらさが意識されそうである。この手掛けづらさが上値追いを慎重にさせ、ポジションもロングに傾きづらくさせ、結果的には良好な需給状況が続いているようだ。