ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などに取り組むとともに、震災後は被災地をサポートする活動を行っている。そんな鎌田氏が、高齢化問題について考える。
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2012年版の高齢社会白書によると、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が23.3%を超えた。日本は世界の先頭を切って高齢化社会が始まっているのである。
現在、女性の平均寿命は、86.39歳。介護を受けたり、寝たきりになったりせず、健康でぴんぴんしている年齢を健康寿命と呼ぶが、女性の場合は73.62歳。平均寿命と12年半ほどの差がある。男性は、平均寿命と健康寿命の差は約9年。この差が問題なのである。平均寿命と健康寿命の差が縮まれば、健康でぴんぴんしているお年寄りが増えるわけだ。そのためには、どうしたらよいのだろうか。
さきごろ来日した国連人口基金の事務局長、ナイジェリアのババトゥンデ・オショティメイン氏は、日本に敬老の日があること、医療保険、介護保険があること、そして認知症の各地域での対策があることを高く評価している。消費税を上げるための社会保障と税の一体改革は、ほとんど進んでいないため、僕もマスコミも高齢化社会対策が不十分だと批判してきたが、実は世界全体からみると、はるかに進んでいて、世界は「日本はよくやっているなあ」と感心しているのだ。
だからといって、これでいいということではないのだが、ダメだダメだと批判するだけではなく、それなりに日本の現状を自己評価しつつ、さらにバランスよく社会保険制度の改革をしていくべきだ。そして、長期的に安定的に維持ができる社会保障と税の一体改革が行なわれるべきだと思う。
※週刊ポスト2012年12月7日号