<「ああ…もうだめ!」>
<「声を出すな」鞭はまたしてもお尻に振り下ろされた>
思わず赤面してしまいそうな過激な描写。これは、今年4月にイギリスなどで発売され、すでに全世界での販売部数が電子版含め6300万部(10月1日現在、シリーズ累計)を記録した官能小説の第一部『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(E.L.ジェイムズ著)の一説。
官能小説といえば男性が読むものと思われがちだが、この作品は主に30~40代を中心とした子供のいる女性の間で人気が高く、“マミーポルノ”というジャンルを欧米で確立した。
主人公は、純朴な21才の女子大生・アナスタシア(処女)。学生新聞の取材を通して青年実業家・グレイ(27才)と出会い、ふたりは徐々に惹かれ合う。だが、アナはグレイによってSMの世界に引き込まれていくことに──このシュールなエロさが、世界中のR30~R40世代の女性をとりこにしたのだ。
日本での版権を獲得した早川書房の担当・山口晶さんは、見どころはそれだけではないと言う。
「SMという突飛な仕掛けはありますが、読んでみると実は純愛小説でもある。30~40代の女性にとっては、忘れかけていた過去の恋愛への懐かしさがあり、そこに満たされない性欲への渇望が相まって、絶大な支持につながっているのだと思います」
イギリスでは発売後3か月で3000万部を突破したが、これはあの『ハリー・ポッター』シリーズを上回る最速記録。ただ、子供から大人まで楽しめる『ハリー・ポッター』とは違って、本作では大人ならではの社会現象が起こっているという。
「この作品の影響で、欧米ではセクシーなランジェリーや手錠などの“セックストイ”の売り上げが大幅に増加しているんです。『セックスレスが解消した』『女性から男性をセックスに誘って妊娠した』なんて声も。来年には、“フィフティ・シェイズ・ベイビー”というベビーブームが来るとの予想もされているほどです」(英国事情に詳しいジャーナリスト・多賀幹子さん)
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号