選挙に勝つための戦略を授ける選挙プランナー。昨今“当選請負人”として選挙になくてはならない存在になりつつある。その中の一人、田村亮氏(35)は、選挙の総合的な戦略立案だけでなく、選挙にお金のかけられない候補者からポスターや看板の制作などを個別に受けることもある。そのなかで、演説の仕方などを聞かれれば、アドバイスもしていく。
今年9月の大阪府河南町の町議選で当選した佐々木きえ氏(32)もポスター制作を依頼した一人だ。
「原発事故を契機にNPOの勉強会に参加するようになり、推薦されて町議選に出ました。選挙に出るのは初めてなので、本を買って勉強して田村さんのことを知り、ポスター制作を依頼しました」(佐々木氏)
意外にも選挙ポスターというのは非常に重要だという。
「多くの有権者は投票所のポスターを見てから、誰に投票するか決めているのが現実です。消去法でも何でもいいので、選ばれる写真を使うことが重要です」(同前)
田村氏が選ぶ写真は、キレイに撮れているとか、本人が気に入っているとかは関係ない。本人らしさが出ていて、顔が印象に残るもの、そしてカメラ目線の写真である。
写真で獲得した票でも1票は1票。当選確率を1%ずつでも積み重ねて上げていくのが選挙プランナーの仕事である。
国政選挙などと違い、地方議会の議員選挙は、とにかく家族や親戚、同級生などを巻き込み、支援者を広げていくことが重要だという。そのうえで、なるべく多くの人に会って挨拶して握手して、顔と名前を覚えてもらう。足を使って“単純接触の法則”を実践するのだ。
「握手にもやり方があるんです。手のひらと手のひらを合わせてしっかり握り、相手が男性の場合は自分のほうへ少し引っ張る、女性の場合は少し押すのが高感度を上げるポイントです」(同前)
挨拶でのお辞儀の仕方もおろそかにできない。選挙でメインターゲットとするのは、人口比も投票率も高い「高齢者」であり、彼らに好印象を与えることが極めて重要だからだ。
「高齢者の支持を得られれば、選挙は勝ちなんです。高齢者にネットで伝わると思いますか?」(同前)
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2012年12月7日号