今回の総選挙を機に引退を表明した森喜朗・元首相(75)。43年に及ぶ国会議員生活を終える前日、本誌の取材を受けた。彼が熱望したテーマは、「ラグビー」である。日本ラグビー協会会長として思う存分ラグビー愛を語り始めたと思いきや、政治論やマスコミ批判に飛躍した。プロインタビュアーの吉田豪氏が切り込む。
森:(首相在任中を含めたびたびメディアのやり玉にあがったが)こないだやられたのは、俺がたまたま野球を観に行ったら叩かれたわけ(※注)。なんであんなことを書かれなきゃいけないのかね?
――ああ、バックネット裏で野球を観たときですね。
森:うん。あの日、御手洗(冨士夫・キヤノン会長)さんが上にいたんだよ。渡辺(恒雄・読売新聞グループ本社会長)さんに誘われて、上のゴンドラみたいな席(VIP席)があるじゃない。でもあんなところで観てると試合が見えない。ホントにスポーツが好きだから、一番前の切符をもらって行ったんですよ。
それがなんでいけないのかね。だって、べつにきれいな女性と行ってたわけじゃないよ? ウチの男性秘書だもん、隣はね。なんで途中で帰ったのか? って、そんなの用事があるから帰っただけだよ。
――なんで最後まで観ないんだ! みたいな(笑)。
森:ね、まったく(笑)。まあ、いいよ。もう本題にいこう。今日はラグビーのことがテーマだっていうから取材に応じたんだよ。そうじゃなかったら、『週刊ポスト』の取材なんか受けるはずないじゃない(笑)。
――なるほど! そんなわけだったんですね(笑)。
森:家内も「なんでポストなんかの取材を受けるの?」って言ってたけど、ラグビーのためならしょうがないと思ったんだよ。ラグビーをPRしてくれるなら。
――今後はラグビーの活動で忙しいんですかね。
森:そう。ただワールドカップを主催するIRB(国際ラグビー評議会)というのはなかなかの堅物で、われわれ新参者、新興国ははじめから相手にしないという感じなんだ。放送の権利もスポンサーも全部IRBに行くんです。僕はまずそこを変えようと思ってるから。で、昨年の会長選でイギリス系の会長とフランス系の会長が争って、僕はフランスを応援して、その票を集めるために、ホントに世界中を回ったの。選挙になると、僕のほうがうまいから(笑)。それで勝ったんだ、フランスが。
――ラグビー界のキングメーカーなんですね(笑)。
森:いや、いや、そんなことはないんだけど。
【*注】週刊ポスト2012年11月9日号で、10月19日のセ・リーグCS第3戦(巨人vs中日)を森氏がバックネット裏で観戦し、途中退席した一部始終がテレビ中継されていたことを取り上げた。
※週刊ポスト2012年12月7日号