“キングメーカー”と称される権勢を誇った森喜朗・元首相(75)は、43年に及ぶ国会議員生活を終える前日、本誌の取材を受けた。彼が熱望したテーマは、現在の政局でも自身の政治人生でもなく、「ラグビー」である。日本ラグビー協会会長として思う存分ラグビー愛を語り始めたと思いきや、いつの間にか話は政治論やマスコミ批判に飛躍……、プロインタビュアーの吉田豪氏が切り込む。
――すいません、こんなタイミングの取材で……。
森:そうだよ。いよいよ明日、クビになるからさ(笑)。
――今日は本会議もあるというのに、まさかこんな時期に取材を受けてくれるとは思いませんでした(笑)。
森:(衆院議員の名刺を出して)これ、通用期間は明日までです。こっちはラグビー協会の名刺ね。2019年のラグビーワールドカップ、このために走り回らなきゃいかんことがいっぱいあるんですよ、これからは。
――今日は『週刊ポスト』の取材ですけど……。
森:はい。よく俺の悪口ばっかり書いてる(笑)。
編集:……。
――ずっとお会いしたかったので。総理時代に叩かれていた頃から、絶対この人はいい人のはずなのにって思ってたんですよ。
森:そう、いい人だよ!
――ですよね! それでも『ポスト』は悪口ばっかり書いてたんですか(笑)。
森 悪口ばっかりだよ!
――首相在任時のマスコミの記事を改めて読んで、よくここまでひどいことを書いてたなって。いまなら確実に訴えられてますよ。
森:訴えられるし、僕はいくつか訴えて、ずいぶん勝ってますよ。一番皮肉だったのは、産経新聞社を訴えたことだよ(※注)。
――もともと森さんがいた会社じゃないですか!
森:そうそう。夕刊フジ相手に、こっちが勝ったんだ。もらえるのが300万だったのかな? 黙ってくれりゃよかったのに、新聞が書いたんだよ。「森、勝訴。裁判所が300万円、産経に支払いを命ずる」と。そうすると、それを見たヤツはみんな、「先生、金出たら一杯飲もうよ」って。
――ダハハハハ! 裁判で儲けたでしょって(笑)。
【*注】1997年、脱税事件などで起訴された石油卸売商から森氏への献金疑惑を報じた夕刊フジ記事に関し、自民党幹事長だった森氏が産経新聞社らを相手に損害賠償を求めて提訴。東京地裁は、献金を受けた証拠はないとして、産経側に300万円の支払いを命じた。
※週刊ポスト2012年12月7日号