過去の栄光やプライドをかなぐり捨てても、現役にこだわる男たちがいる。一度は栄光を掴んだはずの彼らは、なぜ身体を痛めつけ、泥にまみれながらも野球を続けるのか。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、元中日の門倉健のケースを紹介する。
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トライアウトや入団テストは受けなくとも、現役にしがみつこうとするベテラン選手はいる。
今年の春季キャンプに参加して楽天と契約するも、再び戦力外となった下柳剛(44)は、既に国内の道を諦め、海外の独立リーグや、佐藤が所属したイタリアリーグのような、野球後進国での現役続行も視野に入れているという。
また2009年に千葉ロッテから横浜にFA移籍した清水直行(37)の元には、現時点で国内球団からの獲得打診はなく、春季キャンプに招待参加する道を探る。
そして、日本だけでなく、韓国のプロ野球を渡り歩き、野球人生の「ケジメ」として、第2回トライアウトに参加した者もいる。
1996年に中日に入団し、近鉄、横浜、巨人と移籍を繰り返してきた門倉健(39)だ。巨人退団後、韓国の2球団を経て、今年は北海道のクラブチーム「伊達聖ヶ丘病院」に所属した。
「ラストチャンスに賭けていましたから、万全の状態で臨むために一度目は受けなかったんです」
打者5人に対し、外角に丁寧にボールを集め、3三振も奪った(被安打ゼロ)。
「日本のプロ野球選手を相手にするのは4年ぶりですし、アマチュアでの今年1年は、これほどのお客さんの中でやることなかった。感情が高ぶりました」
彼もまた厳しい現実を理解している。
「来年40になりますので。このまま何もしないで終わるより、最後にもう一度だけ、プロのマウンドで投げて終わりたかった」
※週刊ポスト2012年12月7日号