冬の運動不足をスポーツクラブで解消しようと、重い腰を上げて入会を考えている人も多いのではなかろうか。
日本生産性本部『レジャー白書2012』によると、フィットネスクラブの総売り上げは、2007年以降続いたマイナス成長に歯止めがかかっているという。市場規模は4090億円で、2006年に記録した4270億円のピークに再び迫る勢いだ。その理由のひとつは、シニア会員の増加にある。
「若年層の入会はあるが、退会率が高いために新規入会で補えていない。その代わり中高年のフィットネス需要が大きく、会員の高齢化が進んで平均年齢は50歳を超えた。中高年の定着率が高まっていることが収益増に貢献している」(レジャー白書より)
シニア層を囲い込むために、各クラブとも力を入れているのが、専門トレーナーによる個別指導だ。
【コナミスポーツ&ライフ】では、個人の体力レベルに応じて無理のない運動ができる「マイフィットプランナー」を開始。日常の筋力アップやダイエット、ストレス解消まで目的に合った運動メニューが組める。その他、【セントラルスポーツ】や【ルネサンス】でもマンツーマン指導を充実させ、インストラクターとともに、ストレッチ体操やバランスボールなどを使った運動で汗を流す“アクティブシニア”の姿が目立つようになった。
個別指導の極みが【ティップネス】の「オンラインパーソナルトレーニング」。会員に適した動画付きの運動メニューをネット経由で受け取り、自宅に居ながらにして運動できるサービス。おまけに、個別指導員がメールで相談に乗ってくれ、まさに至れり尽くせり。
なにも屋内だけが運動場所とは限らない。小田急電鉄が東京・狛江市で8月に開設した【BLUE多摩川アウトドアフィットネスクラブ】は、隣接する多摩川の河川敷でウォーキングやランニング、ヨガなどアウトドアのプログラムが楽しめる“青空フィットネス”だ。
「従来のフィットネスクラブはジム、スタジオ、プールを備えるだけのスタイルでしたが、いまや人工温泉やサウナ、エステまで備えているクラブがあり、総合的なリフレッシュ施設としての役割が求められています。また、カルチャー講座やアウトドアイベントの企画などへの参加が増えていることから、スポーツ目的だけでは満足できず、健康になりながら何かを学んだり、友達を作ったりという高齢者の欲張りなニーズに応えないと生き残れない業界なのです」(健康関連の専門紙記者)
従来型フィットネスクラブの既成概念を打ち壊して勢いに乗っているのが、大和ハウスの子会社が展開する【スポーツクラブNAS】である。会員制エステに溶岩スタジオ、西日暮里店には昭和30年代の東京の街並みを再現した交流スペース「NAS元気横丁」まで併設する。近隣には子供向けの学習教室などもオープンさせる予定で、世代を超えた会員獲得にあらゆる手立てを打つ。
かくして、スポーツクラブは、若者がストイックにトレーニングに励む場所から、シニア層を中心に無理なく余暇を充実させるエンターテインメント施設へと変貌を遂げているのである。