12月1日から、なんとあの東京ディズニーランドで「おでん」が販売される。コンビニでなく夢の国に現れたおでんとは、いかなるものなのか、いささか戸惑いも隠せない。大人力コラムニスト石原壮一郎氏が「ディズニーおでんの大人的楽しみ方」を伝授する。
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夢の国ってことで現実離れした建物が並ぶ空間で、今日も大量の着ぐるみがウロウロしている東京ディズニーランド。来年4月で開業30周年を迎えます。最初は不自然に感じられたアメリカンな明るいノリや、どこかウソっぽさが漂う世界観も、なんとなく「そういうもの」として定着してしまいました。
今さら「東京じゃないくせに!」と突っ込むのもマヌケだし、ディズニーランド嫌いを気取ったところで共感も反発も得られず軽く流されてしまうだけでしょう。
そんなこしゃくな東京ディズニーランドで、12月1日から「おでん」が食べられるようになりました(期間限定で2013年4月10日まで。ザ・ガゼーボで販売)。「ホットポット」という名前で、お値段は500円。大根、タマゴ、ロールキャベツ、さつま揚げ、さらに、ミッキー型のオレンジのコンニャクが入っているとか。
横文字の名前というのがちょっとアレですが、日本の伝統的な冬の食べ物であるおでんに目を付けたのは、まあ、意外にかわいいところもあると言えます。そんなつもりがあるかどうかはわかりませんが、日本の文化に歩み寄ってくれたと受け止めて、大人としてきちんと応えたいもの。この「ホットポット」の大人な活用法を考えてみましょう。
おでんと言えば、ダチョウ倶楽部の「おでん芸」。上島竜兵が、熱そうなおでんを口ではなく頬などで受け止め、大げさに熱がるというものです。ミッキー型のこんにゃくを使って、これをやってみるのはどうでしょうか。もちろん、本当に熱い状態である必要はありません。いかに熱そうに見せるかが、この芸の真骨頂です。
東京ディズニーランドという場所で、ほどよく冷ましたおでんを大げさに熱がることによって、大人のお約束の大切さや素晴らしさを再認識できるはず。そうすれば、素直な気持ちで着ぐるみや張りぼてにウットリできて、せっかくの夢の国をさらに深く満喫できるに違いありません。日本の伝統的な食べ物に姿を変えているミッキーで、日本の伝統的な芸を楽しめば、アメリカ文化を制したような気分も味わえるでしょう。
自宅から太めの竹串を持参し、えーっと、ロールキャベツ、タマゴ、ミッキー型のコンニャクの順で突き刺し、「チビ太のおでん風」にしてみるのも一興。「ケケケ」と笑いながら食べれば、自分の手で日本文化とアメリカ文化を美しく融合させたような、赤塚不二夫先生とウォルト・ディズニーを握手させたような、そんな錯覚を抱けそうです。
好き勝手なことを書きましたが、心が広いことで知られるディズニー方面のみなさまは、こんなことで目くじらを立てたり文句を付けたりはしないと信じています。
さあ、寒くなるこの季節、家族や恋人や友だちと楽しくて愉快な東京ディズニーランドを訪れましょう。できればなるべく早く。おでんは急げ!