ゴルフファンにとっては、何ともいたたまれない事件が発覚した。
11月15日、山形県警は女子プロゴルファーの西村友希(23)を窃盗の容疑で逮捕した。西村は10月24日に県内のゴルフ場で行なわれていた企業コンペにゲストとして出場、そのロッカーで参加女性のクレジットカードを盗み、その後たびたび使用したために足がついたのだという。
西村はゴルフの名門・埼玉栄高出身で2008年のプロテストに合格。同期にはツアー2勝で今季賞金ランキング6位(7503万円)の森田理香子や、今年初優勝を挙げて人気急上昇中の木戸愛(同29位=2992万円)らがいる。しかし、西村はデビュー4年間でツアー競技出場は4試合のみで、生涯獲得賞金はわずか86万円だった。
罪が事実ならば当然許されるものではない。しかしこの転落劇について、あるゴルフ関係者はこういう。
「華やかに見える女子プロの世界ですが、それはほんの一握りの選手の話。現在登録されている女子プロ973人のうち、賞金1000万円以上を稼いでいるのは63人だけ。賞金を獲得している“最低ライン”は、165位・たにひろえの22万円。つまり、800人ほどは賞金ゼロの状態なのです。ほとんどの女子プロが、赤貧生活を送っている」
これは実に83%もの女子プロゴルファーが獲得賞金ナシということを意味しているのだ。
景気の良かった頃は企業コンペに招かれれば1回10万円ほどのギャラが出たし、そこで知り合ったアマチュア相手のレッスンで生計を立てることもできた。が、それも今は昔。
試合に出るにしても、トーナメントに遠征すれば10万円は経費がかかる。協会への月会費4000円すら払えず、飲食店でバイトをするプロもいる。
「多くのプロが、メーカーからボールや用具の無償提供を受けるのがせいぜい。シードを獲得しているような少数の実力派でない限り、高額な契約金は望めず、それどころかゴルフ場の倒産が相次いで練習場すら失ったプロも多い。タニマチを見つけようと全国津々浦々のコンペに駆けつけ、プレー後もメールや電話でフォローする、キャバクラ嬢みたいな暮らしをしている者もいます」(前出の関係者)
この状態は、なにも無名プロばかりの話ではない。今年は賞金女王経験者である上田桃子、大山志保らもシード落ち。誰もが一歩足を踏み外せば、赤貧生活に逆戻りするリスクを抱えているのである。
犯行当日、西村のブログには「山形で久しぶりに虹を見たよ」との書き込みがあった。大雨に見舞われた彼女の人生で、再び虹が出るのはいつの日になるだろうか。
※週刊ポスト2012年12月7日号