冬になると女性の9割が利用するというハンドクリーム。乾燥が厳しいこの時期、欠かせないアイテムだ。2012年のハンドクリーム販売額は192億円(見込み)で、ここ10年間で約18%の伸びを見せた(富士経済調べ)。昨今は男性の利用も増えているといい、ドラッグストアには、様々なパッケージ・効能・香りのハンドクリームが並ぶ。
ハンドクリーム市場拡大の背景について、美容ライターの城後紗織さんはこう語る。
「スマートフォンの普及が背景の一つにあると思います。タッチパネルは、指が乾燥していると反応しにくくなることがあるようです。スマホを使う方が増えたことで、手の乾燥に気づく方が増えてきたのではないでしょうか」
インプレスR&Dが発表した『スマートフォン/ケータイ利用動向調査2013』によると、個人のスマートフォン利用率は約40%、前年よりほぼ倍増した。指を繊細に使う機会の増加が、ハンドクリーム市場を後押ししているようだ。
ではどんなハンドクリームが人気なのか。城後さんによると、「2極化」と「使い分け」が進んでいるという。
「大きく2種類の流行があります。1つは、ローズやシトラスなど、アロマ精油の香りがついたもの。香りの種類も豊富な上、香水ほど強くはないので、オフィスでも気兼ねなく使え、リフレッシュできますね。『ロクシタン』や『ジュリーク』など、パッケージもお洒落な海外化粧品メーカーの商品などが人気です。
もう1つは、老舗製薬メーカーの、薬用タイプのハンドクリームも根強い人気があります。『ロコベース リペア』や『ユースキンA』などは保湿性が高く、手以外にも使えますから、一家に一つ置いておくと安心ですね」
こうした多彩化を背景に、いま、用途や気分に合わせての使い分けが増えているという。スマホやパソコンを使う際にはベタつきが少ないタイプを。料理前は無香料のものを。デートの前は、ほのかな香りを練り込んで。「ハンドクリームはお値段も手ごろなものが多いですから、2~3つ持つ方が多いです」と城後さん。
また、見逃せないのが、男性の利用者が増えていることだ。20~40代の育児に積極的な男性(イクメン)の約3割は、手荒れに悩んでいるという調査結果が出ているように、生活スタイルの変化からハンドクリームの必要性が高まっている。ここ数年のメンズコスメやメンズネイルの広がりも、男性にとって、ハンドクリームを身近にしているようだ。「SABON ハンドクリーム ジェントルマン」や「ポール・スチュアート」など、男性を意識したハンドクリームも充実しつつある。
名刺を出したりパソコンをたたいたり……様々なビジネスシーンで意外と見られている手を清潔に保つのは、紳士としての身だしなみ。だが、それだけではない。男性の気になるパーツに「手」をあげる女性が多いことから、女性からの好感度アップも期待できるかもしれない。
ハンドクリームの流行に伴って、こんな荒技を駆使する30代女性もいる。「飲み会には品のよい香りのよいハンドクリームを持って行くんです。気に入った男子の隣に座ったら、自分で塗りつつ、隣の子にも“塗ってみる?”って。もちろん私が塗ってあげる。手のマッサージにもなるし、喜ばれるんですよ。ポイント高いみたいです(笑い)」
常時空気に触れる手は、実年齢よりも10歳早く老けるという。楽しくケアをして、アンチエイジングも進めたい。