投資情報会社・フィスコ(担当・村瀬智一氏)が、株式市場の11月26日~30日の動きを振り返りつつ、12月3日~7日の見通しを解説する。
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先週の日経平均は上昇。週末には9500円にあと一歩に迫る局面をみせ、戻り高値を更新している。引き続き欧州債務問題と米国では「財政の崖」回避に向けた協議の進展に振らされるなか、国内では政権交代期待を背景とした円安基調を追い風に底堅い相場展開が続いた。
ギリシャ債務問題については、26日のユーロ圏財務相会合で支援策で合意に達し、一先ず安心感につながった。一方、米感謝祭明けから「財政の崖」回避に向けた本格協議が再開された米国では、「進展はみられず」といった報道がされるなか、波乱含みの局面もみられた。
ただ、「財政の崖」についてオバマ大統領はクリスマスまでに解決したいと発言しており、一先ず小康状態に。その後も楽観的な発言などが伝えられるなか、次第に期待感が高まる状況。また、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での緩和期待が高まってきている。
国内では米国の不安定な値動きや円安一服の動きがみられるなか、海外勢によるリターン・リバーサルの動きが一巡したとの見方や安倍トレード(株式買い・円売り)の巻き戻しとの見方から、週半ばにかけて利益確定の売りに押される展開に。
しかし、このムードを払拭させたのが今回も安倍総裁発言となった。29日には8時台から講演内容が伝わると、為替市場で円相場が下落する格好となり、景気敏感株を中心とした主力銘柄への物色に向かわせた。その後も「ニコニコ動画」での党首討論会、週末には記者クラブでの党首討論会など、安倍総裁発言へのインパクトを狙った売買も活発だった。
また、日経平均は戻り高値を更新したものの、日中は高値圏でのこう着が続くなか、物色の流れはDeNA<2432>などSNS・ゲーム関連のほか材料系の銘柄が幅広く物色されるなど、個人主体とみられる商いも活発となり、個人の良好な需給状況がうかがえた週であった。
今週は師走相場入りとなる。12月4日には衆議院総選挙が公示(16日投開票)され、選挙ムードが一段と高まることになろう。政策期待を手掛かりにした物色の流れが続くとみられ、年末高への期待感にもつながるとみておきたい。
需給面ではヘッジファンドの11月決算が通過し、今後は新年度入りによって資金流入が期待される。米国の「財政の崖」問題に対する不安感がくすぶるようならば、日本への資金流入が増加する可能性もあり、主要銘柄の上昇が日経平均をけん引する格好となる。上海指数が連日で安値を更新するなか、日本へのリターン・リバーサルの流れも引き続き注目される。
欧州では3日にユーロ圏財務相会合が開かれるほか、6日に欧州中央銀行(ECB)が金融政策を発表し、ドラギ総裁の会見が予定されている。米国では多くの経済指標の発表が予定されており、週末7日には11月の雇用統計(予想は10万人増)が控えている。足元では好調な経済指標の発表が続いており、たとえ予想を下回ったとしても、翌週のFOMCへの期待感につながろう。
中国では3日に11月の非製造業PMI、HSBC製造業PMI(改定値)、5日に11月のHSBCサービス業PMIなどが予定されている、景気底打ちに感につながるようならば、機械セクターなどへの見直し材料になろう。
東証1部の売買代金は今週10営業日ぶりに1兆円を下回った。為替動向と海外勢による資金流入を見極めながらの相場展開となろうが、調整を交えつつも政策期待を背景とした年末高を意識したスタンスとなろう。