日本政府の尖閣諸島国有化に猛反発し連日示威行動を続ける中国。軍事費の膨張ぶりも凄まじい。はたして中国の狙いは何なのか、このほど『中国に立ち向かう覚悟』(小学館刊)を上梓した櫻井よしこ氏が解説する。
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アジア・太平洋地域は、かつてない軍拡の時代に入っています。中国は軍事費を1989年から現在までほとんど毎年、2ケタ増を続け、約四半世紀で実に30倍に増やしました。11月25日には、中国初の空母「遼寧」の発着艦試験が行なわれました。日本の新総理がまず立ち向かわなければならないのは、軍事的膨張を続ける中国です。
中国の脅威に対処するために、フィリピンは軍事費を前年比37%、ベトナムも24%増やしました。
もちろんどの国も軍事費予算を増やしたくないのが本心でしょう。しかし、中国の侵略を防ぐには、軍事力はどうしても必要です。実際にフィリピンの軍艦と中国の監視船が南シナ海でにらみ合いをし、フィリピンは一歩も譲りませんでした。ベトナムも毅然とした態度で、やる時はやるという姿勢を崩してはいません。
なぜアジア各国が懸命に中国と対峙しようとしているのか。それは中国がどんな国であるかを理解すれば自ずと明らかになります。
11月の共産党大会で胡錦濤氏が行なった演説はすさまじいものでした。「台湾問題」を解決して「中華民族の偉大な復興」を実現するとし、さらに「海洋、宇宙、ネットの安全保障を大いに重視し、平時の軍事活用を積極的に計画し、軍事闘争への備えをたえず広げ、深め」て、「多様化した軍事任務を完遂する能力を高めるべきだ」としました。
さらにこうした軍事闘争を「軍隊に対する党の絶対的指導」の下で進めるというのです。習近平氏も軍事闘争への準備を最優先課題とする旨の演説を行なっています。
これらを総合すると、中国は中国共産党独裁のもとで、中華思想に基づいて飽くなき膨張を続ける。それを「軍事闘争」によってなし遂げるということです。
そうした姿勢を鮮明にする中国に、アジア・太平洋各国は非常に警戒感を強め、自国の軍事力を飛躍的に強化し、米国を中心に他のアジア諸国との軍事的連携を強化しています。そのなかで日本のみがこの事態を認識していないのです。
ただ1国、日本のみが軍事費を削減し続けてきました。アジアの小さな国々が主権国家として中国に毅然と対峙しているにもかかわらず、大国である日本が中国の顔色ばかりうかがっている。こうした姿はアジアの国々の目に非常に奇妙に映っているのです。
※週刊ポスト2012年12月14日号