高齢者の誰もが悩まされる老視、いわゆる老眼は従来なら仕方がないと諦めていたが、今では視力の回復が可能だ。
カメラのレンズに当たる水晶体の周囲の筋肉は、状況に応じて水晶体の屈折力を調節し、ピントを合わせている。その調節力が加齢とともに衰えることで、近くのものにピントを合わせることができなくなるのが老眼のメカニズムである。
老眼の矯正は老眼鏡で行なうのが一般的。しかし最近では、保険適用外ではあるが“老眼鏡いらず”の対応策も登場している。
最先端の老視(老眼)治療に取り組んでいる南青山アイクリニックの戸田郁子・院長がこう語る。
「その一つがレーシックです。これはレーザーを照射して角膜のカーブを整え、近視や遠視、乱視を治す眼科医療で、老眼に対応することができます。その中でも効果的な方法が『モノビジョンレーシック』です。
通常は利き眼ではない方の眼を近視の状態にすることで、利き眼で遠く、反対の眼で近くを見て、脳が両方の画像を合体させることで近くも遠くも見えるようにします。左右の視力のズレに違和感を持ち、慣れない人もいますが、手術前にコンタクトレンズで試せるため、自分に合うかどうかが確認できます」
他にも、老眼鏡を使いたくない人には、「アキュフォーカスリング」という方法がある。これは直径3.8ミリの極薄の黒いシートの中央に1.6ミリの穴が開いたもので、このシート状のリングを片方の角膜に埋め込む。
すると、小さな穴から覗いているのと同じような状態になり、ピントの合う距離が広くなることで、モノビジョン同様、遠近両方が見えるようになる。
費用の目安は、モノビジョンレーシックが片眼17万円、アキュフォーカスリングが片眼30万円だ。
「白内障の手術で使われる人工のレンズにも遠近両用の『多焦点眼内レンズ』があり、これを挿入すれば、白内障とともに老眼も治せます。ただ、このレンズも保険が適用されず、自費診療となります(両眼で約80万円、施設により異なる)。一部のレンズに対しては先進医療が認められていますが、高額なことには変わりありません」(同前)
※週刊ポスト2012年12月14日号