コンビニエンスストアの出店競争が激しさを増している。主戦場は日本ではなく海外だ。大手コンビニの海外店舗数は、2012年度中に国内総店舗数5万店を超える見込みで、異国を舞台とした“陣取り合戦”の勝敗が売上高を左右する時代に入った。
大手コンビニ3社の主な海外進出状況は以下の通りだ。
■セブン―イレブン(国内1万4783店/海外3万3518店)※9月末現在
アメリカ7558店、タイ6773店、韓国6621店、台湾4830店、中国1881店ほか
■ローソン(国内1万1020店/海外466店)※10月末現在
中国385店(上海・重慶・大連)、インドネシア79店、ハワイ2店
■ファミリーマート(国内9160店/海外1万2419店)※10月末現在
韓国7741店、台湾2842店、中国1030店、タイ767店ほか
こうして見てみると、アジアへの出店が海外事業の牽引役となっていることが分かる。コンビニ業界の専門紙『コンビニエンスストア速報』編集長の清水俊照氏が語る。
「アジア諸国は今の中国のように市場が開放されてビジネスチャンスは広がっています。特にフィリピンやベトナムなどは人口の平均年齢がそれぞれ23歳、27歳と若く、24時間営業の最大顧客である若年層を取り込みやすく、コンビニにとっては魅力的な市場です」
経済発展も見込める両国で出店を加速させているのはファミリーマート。タイは今後10年で3000店、フィリピンは5年で300店体制を掲げるなど鼻息が荒い。フィリピンは観光客の多いセブ島も抱え、10月にミニストップが新店を出すなど、大手以外のコンビニの動きも活発になっている。
そして、いまコンビニ業界が虎視眈々と市場開拓を狙っているのがマレーシアである。11月、サークルKサンクスが初の海外進出先としてマレーシアを選んだのに続き、ファミリーマートも追随する構えを見せた。
「サークルKサンクス、ファミリーマートとも同じ時期からマレーシアの市場調査をしていましたが、マレーシアは外資規制があって小売業界の参入は難しかったのです。ただ、12月中に規制緩和される見込みのため、一斉に進出を果たそうとしています。おそらくローソンも間髪入れずに出てくると思います。ちなみにセブン―イレブンは、まだ出ていないアジア地域に対し、『後から参入しても利益は上げられる』としばらくは余裕の静観です」(前出・清水氏)
一方、日本のコンビニが一斉に流入してくることに当のアジア各国は警戒感を強めている。地元商店が隅に追いやられると危惧しているからだ。そのため、一定の参入障壁は覚悟しなければならない。しかし、清水氏は日本のコンビニが海外に出ていけば、その国にとってもメリットは大きいと説く。
「コンビニを多店舗展開するには商品供給のための物流網が必要で、その整備を日本のコンビニがやることで国の近代化につながります。確かに地元の商店は大変でしょうが、その人たちもコンビニのオーナーになってフランチャイズ契約を結べば店を経営することだって可能。必ずしも地元の人たちを排除することにはなりません」
果たして、新興アジア市場に根付くコンビニはどこか。