その始まりは、最近の地震のどれとも違っていた。まず、「ゴゴゴーッ」という地鳴りのような響きが感じられ、身構えた瞬間に「ドンッ!」とタテに突き上げる衝撃が。やがてユサユサと揺れ出したときにはこの地震がもしかすると巨大なものではないかという恐怖に襲われていた。そう、昨年3月11日のように――。
11月24日、東京23区や神奈川県東部で震度4を観測した地震は、首都圏の交通機関を一時マヒさせ、2万人の足に影響をもたらした。
今年に入り、首都圏で震度4以上の地震は滅多に起こらなくなっていた。それだけに、今回の地震は、首都直下型地震への不安を掻き立てるものだった。この揺れについては地震学者たちも注目している。
東京都は今年4月に、M7クラスの震災が首都圏を襲った場合の被害想定を発表している。実は、今回の震源地の千葉県北西部は、想定されている「首都直下型地震」のなかで最も被害が深刻という東京湾北部地震と同エリアなのだ。
震源地の符合を踏まえた上で地震学者の島村英紀氏はこう語った。
「今回の地震は規模こそ大きなものではありませんでしたが、不気味な揺れですね。私見としては『関東が通常の状態に戻りつつある』という認識です。最近こそ大きな揺れはありませんが、歴史的にみれば関東地方は大地震が続発している地域です。江戸時代の記録などをみると震度4~5程度の地震は頻繁に起こっていました。つまり、通常とは頻繁に地震が起こる状態という意味です」
防災科学技術研究所理事長の岡田義光氏は、「今回の地震は直接、大地震を誘発するものではない」と語りつつも、首都直下型地震の危険性について説明する。
「首都直下型のM8クラスの巨大地震は、約200年周期で発生していると考えられています。その巨大地震の発生後、約80~100年の“静穏期”を経て、再び“活動期”に入る。活動期に入ればM7クラスの地震が頻発し、最後にM8クラスの巨大地震が発生します。1923年の関東大震災から現在までの東京が静穏期だとすると、そろそろ活動期に突入する。M7クラスの地震はいつ起こっても不思議ではない」
※週刊ポスト2012年12月14日号