マクドナルドの快進撃に、ついにブレーキがかかった。宅配サービス対応店を増やすなど体質強化策を打ち出したが、大前研一氏はこの方針に疑問を抱いているという。以下、氏の解説である。
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日本マクドナルドは11月23日から、TVアニメ『たまごっち!』に登場するキャラクターを使ったおもちゃがセットになった子供向け「ハッピーセット」の発売など新たなキャンペーンを開始した。おまけで家族連れやリピーターの集客増を図る恒例の販促戦術だ。
しかし、既存店売上高で8年連続、営業利益で6年連続のプラスを続けてきたマックの快進撃にも、ついにブレーキがかかった。既存店売上高が2012年4月から10月まで6か月連続で前年同月比マイナスに陥り、同年1~9月期連結決算の営業利益が前年同期比2ケタ(17.8%)の大幅減に転落したのである。
今回の業績悪化について同社の原田泳幸会長兼社長は「東日本大震災後、従来の予見が当たらなくなった」「消費者が求めるお得感が震災の前と後で違ってきた」「今年4月以降は売り上げが伸びてくると考えていたが、想定した回復力はなかった」「最大の理由は、外食マーケットの縮小もあるが、消費者が弁当や総菜などの“中食”に大きくシフトしたから」などと分析。
今後は中食需要を取り込むために宅配サービス対応店を大々的に増やすほか、新型ドライブスルーの拡大、販促費用の朝食メニューや定番商品への振り向け、不採算店の大量閉店といった戦略で体質強化を進める方針を示した。
だが、この現状認識や改善策は大いに疑問である。マックの失速は、もっと本質的な問題が原因だと思う。
とくに1回1500円以上の注文が必要で、配達料が別途300円(年内は初回無料)かかる宅配サービスが成功するとは思えない。私自身、宅配スーパーを15年間にわたって経営していたが、客単価2000円以下の商品を宅配して利益を出している会社は一つもないし、配達料を払ってマックを頼む日本人が大勢いるとも思えないからである。
※週刊ポスト2012年12月14日号