12月2日、中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落する事故が発生、9人が死亡する大惨事となった。今回の事故で落下したコンクリート板は、天井から金具でつり下げる形式で天井を仕切る天井板だった。トンネルなどの構造に詳しい、地盤システム研究所の近久博志所長はこう説明する。
「短いトンネルは内部の空気が自然に排出されるため、必要ないのですが、1km以上もあるような長いトンネルの場合、排気ガスが溜まってしまい視界が悪くなってしまいます。そのため換気が必要なのですが、そこで代表的な装置のひとつが、笹子トンネルのような天井板で仕切ってダクトを作っているタイプなんです」
事故の原因は、天井板を支えるため、天井に取り付けたつり金具のボルトが脱落したためと考えられている。定期点検はわずか2か月前の9月に行われているが、その際、今回脱落が確認されたボルトについては、双眼鏡と懐中電灯を使っての目視のみ。管轄の中日本高速道路は「(ハンマーで叩いて異常がないかを確認する)打音点検をすべきだったというのが反省点」と、その点検方法が不充分であったことを認めた。だが、反省すべきはそれだけではない。
トンネル内のボルト等は、トンネル完成から37年間一度も交換したことがないのだ。そして、さらなる問題点を防災システム研究所の山村武彦所長が指摘する。
「問題なのは、万が一ボルトが壊れたり外れたとしても、大事故が起こらないようにワイヤーを張って落ちないようにするなど、最悪の事態を想定した措置をとっていなかったことではないでしょうか。トラブルが起こったとしても、最悪の事態を防ぐ“フェールセーフ”という考えが足りてなかったのではないかと思いますね」
恐ろしいことに、惨劇を引き起こした笹子トンネルと同様のタイプのトンネルが、全国に37路線49か所も存在しているという。
※女性セブン2012年12月20日号