プロ野球選手が次々と契約更改を済ませ、大幅アップに喜ぶ選手とダウンに涙する選手の人間ドラマがファンの興味を集めている。現代の選手査定は、プロ経験者のスタッフが全試合をチェックして付けられているが、そもそも昔は交渉自体がどんぶり勘定だった。球界の生き字引、金田正一氏が語る。
「ワシの入団1年目の契約更改は、ワシが未成年ということで監督が同伴したが、ほとんど上がらなかった。他人に任せたらダメだと思ってその後は自分で交渉したよ。ワシの場合は前借りもしたな。“やったからくれ”ではなく、“やるから信じて前払いしてくれ”といった具合だ」
もはや無茶苦茶だが、球団がこうした大まかな査定をしていれば、選手によるゴネ得がまかり通る。だからこそ公平で厳正な数値で査定する方法が、各球団で確立されてきたのだろう。
情が移っては、ということで選手との個人的交際を戒める査定担当スタッフは少なくない。球団にとっても選手にとっても、それだけ契約更改はクールで切実な問題なのだ。長年、西武とダイエーで契約更改に当たってきた経験を持つプロ野球経営評論家の坂井保之氏はこう語っていた。
「毎年ゴネる選手は決まっているんだよ。そういう選手は大体自分の実力や体調に自信のないヤツなんだ。本当に自信があれば、1000万や2000万の違いでモメやしないもんだよ」
※週刊ポスト2012年12月14日号