進行大腸がんで腸閉塞を起こし救急搬送された場合、転移がないことを確認し手術を行なう。事前に肛門からイレウス管を入れて減圧後実施することもあるが、長時間で患者と医師に多大な負担がかかる。
今年、日本で大腸ステントが保険承認された。狭窄部にステントを留置すると、短時間に解消する。現在は術前減圧と手術できない大腸がん患者の緩和ケアに使われ効果を挙げている。
大腸ステントは、形状記憶合金でネット状に編まれた直径22ミリメートルの筒で、直径約3ミリメートルのプラスティック製のチューブの中に折りたたまれた状態で入っている。内視鏡にチューブを通し肛門から入れ、腸内を見ながら狭窄部に到達したところで、ステントを押し出すとゆっくり広がる。
腸管より少し小さい筒状に広がり、便がそこを通るので減圧できる。腸内にとどまっているので便の通り道は確保され、手術までの間、苦痛もなく食事もできる。その後、ステントごと切除して取り去る。
こうした救急搬送された患者の術前治療に使うだけでなく、手術ができない患者の緩和ケアとしてもステントの有用性が確認されている。東邦大学医療センター大橋病院消化器内科の前谷容教授に話を聞いた。
「高齢や他の合併症があり、手術ができない、また高度に進行していて根治手術が難しい患者に対し大腸ステントを留置することで、腸閉塞に伴う症状を緩和することもできます。狭窄が解消すると食事を取ることもでき、患者のQOL(生活の質)が向上します」
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年12月14日号