健康志向や環境意識の高まりによって、自転車を足代わりに利用する人が増えている。
一般社団法人自転車協会の調べによると、自転車保有台数は増加傾向にあり、2008年時点で約6910万台。2人に1台は所有している計算だ。また、ブームの波にも乗ったスポーツ自転車の市場は、2011年で2040億円(日本生産性本部『レジャー白書2012』)あり、余暇での自転車需要も伸び続けている。
昨年の東日本大震災以降は、自転車通勤をするサラリーマンの姿も多くみかけるようになった。
「交通パニックによる帰宅難民になって、もうあんな経験はしたくないと効率のよい自転車通勤に切り替えました。幸い、ウチの会社は距離に応じて自転車通勤者には4000円~1万円の手当てが出るので、経済的にも助かっています」(都内在住の40代会社員)
だが、自転車の普及が進むにつれて社会問題化しているのが事故件数の多さ。2011年度中に発生した自転車事故は全国で14万7629件。中でも東京都内で起きた自転車が関与する事故の割合は、交通事故全体のじつに37.3%を占めている。
そんな状況下で関心を集めているのが、「自転車専門保険」。いったいどんな保険なのか。『やっぱりあぶない、損害保険の選び方』(三五館)の著者である保険コンサルタントの村田稔氏が解説する。
「商品の中身はクルマ保険と同じで、①自転車が壊れたり盗まれたりしたときの物損保険②乗っていた人がケガをした場合の医療保険③人や物にぶつかって相手をケガさせたときの賠償保険――などがパッケージ化されています。保険料は安くネットやコンビニで簡単に加入できる商品が増えています」
主な商品は、三井住友海上火災保険がセブン―イレブンジャパンと提携して発売している【自転車向け保険】(保険料4760円ほか)や、携帯電話の加入者なら“保険料月100円”と安さが売りのau損害保険【100円自転車プラン】など。手軽に加入できるとはいえ、いずれの商品も「死亡・後遺障害400万円」「対人賠償1億円」など、保障は手厚い設定となっている。
では、どんなポイントで自転車保険に入ればよいのか。
「若い人が入るなら対人賠償額の多い保険が理想です。万が一歩行者でもはねて死なせてしまっても支払い能力がありませんからね。自分のケガについては、日常生活における賠償という項目で火災保険の特約でついている商品もあるので、わざわざ自転車専門の保険に入らなくても済む場合があります」(前出・村田氏)
自動車保険の人身傷害保険でも、自分で起こした自転車事故によるケガをカバーしているものもある。まずは補償内容が重複しないよう、既に加入済みの保険をチェックしたい。そして、最も注意しなければならないのが、自分の「過失」についてである。
「いまのところ自転車保険は加入の条件が緩いものの、いずれは年齢や過去の事故歴も問われてくるでしょうし、スマホを操作しながら、音楽を聴きながら自転車に乗って事故を起こした場合は、補償額を減らされることも十分にあり得ます」(村田氏)
秩序やルールを無視した乱暴なサイクリストに、「保険に入れば安心」という常識は通用しない。