数々の時代劇を生んできた東映京都撮影所。そこには時代のスターたちを輝かせ続ける、裏方たちの職人技の世界がある。そうした裏方の一人が、照明技師の安藤清人さん(65)。
吉永小百合ら大女優から指名の入る照明技師の安藤さんは、映画『千年の恋 ひかる源氏物語』(2001年)を始め、4度の日本アカデミー賞優秀照明賞を受賞、名実ともに日本を代表する照明技師の一人だ。2013年12月公開予定の映画『利休にたずねよ』(出演・市川海老蔵)にも参加する。
その安藤照明といえば、和紙を用いたソフトな光が特徴。
「あるとき工藤栄一監督から、“安藤、そろそろ障子もええよ”と。和紙を通った光は拡散して、ものすごくソフトになる、試したらごっつい世界が変わりました」(安藤さん)
事実、安藤さんの作品は、ふぁ~っとした柔らかな光が広がり、ろうそくや月あかりを頼りに暮らした、日本人の奥ゆかしさも伝わってくるよう。
「東映を支える若い世代をもっと育てなと思うんやけど、俺のやり方は“こうしなさい”って教えて伝わるもんでもないし、見よう見まねで覚えていくものだから悩ましいんや」(同前)
撮影■太田真三
※週刊ポスト2012年12月14日号