シニアを悩ませる代表的な眼の疾病である白内障。50歳前後から増え、60歳以上では8割の人が悩むとされる“国民病”だ。福田康夫・元首相や、女優の中村玉緒など多くの有名人も過去に白内障の手術を受けている。
『白内障のひみつ』(朝日出版社刊)の著者で、三井記念病院眼科部長の赤星隆幸氏は、患者の眼に負担をかけずに短い時間で手術を済ませるために、独自の「フェイコ・プレチョップ法」という手法を考案。年間8000件もの手術を行なっている。
「2ミリ以下の幅で角膜を切開し、独自に開発したプレチョッパーという器具で水晶体を分割する方法です。そして分割された水晶体を超音波で砕いて液状にして吸引する。プレチョッパーで水晶体を分割するため、超音波を使う時間が2秒ほどで済み、患者の負担が少ないのが利点です。また、全体の手術時間は従来の手法では20分前後かかりましたが、3~4分で終わります」(赤星氏)
プレチョップ法は日帰り手術が原則で、手術後すぐに眼が見え、眼帯をつけず生活できる。入院の必要がないので、手術費用も保険適用(3割負担)で片眼5万円、両眼10万円ほどだ。
決して容易な手術法ではないために、プレチョップ法を国内で受けられる医療施設は全国で数十施設と限られている。だが、赤星氏はこれまで世界66か国の学会に招かれ、その技術を伝えてきた。海外では2年ほど前から水晶体の分割までコンピュータ制御で行なうという治療が広がり始めているという。
これが日本に導入されれば、プレチョップ法がさらに普及するかもしれない。
※週刊ポスト2012年12月14日号