“環境問題”は、気付いた時には大事になっている場合が多い。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が「匂い環境」について指摘する。
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「ファミリーマートから異臭がする」という奇妙な話が、ツイッターやネットで一気に広がりました。「雑巾のような匂い」「乳製品の強い匂い」「銀杏のような匂い」「くさくて耐えられない」などなど書き込みが。
奇妙な匂いの原因と推測されたのは……新商品「チーズナゲット」。『鶏の胸肉・もも肉・皮を使用したジューシーなナゲットに、濃厚な風味のチェダーチーズを混ぜ込んだもの』(公式サイト)。それを店内で「調理」する際、発生する個性的な「匂い」が異臭騒動につながったらしいのです。その一方、「味はおいしい」と絶賛されている。
「チェダーチーズ」の香りが「揚げる」ことで増幅し拡散? それにしても、苦情の嵐になるほどの匂いって、どんなものなの? 近所のファミマに買いに行くと…あれ? 「匂い」どころか、「チーズナゲット」の姿もない。
「今、売り切れでして……」と店員さん。
「明日は買えますか」
店員さんは「いや…」と口ごもり、「でも販売終了にはなっていないので」と言いつつも、いつ入るかはわからない、と。
別の店では、「販売があまりに好評で、一時的に販売停止中」という趣旨の張り紙が。「12月中旬に販売再開」「楽しみにお待ちください」と思わせぶりな予告も見かけました。
再登場するとすれば、その時、「匂い」はどうなっているんだろう? 薄まっている? マイルド化するために今必死で商品改善を行っているのかな? などとあれこれ想像してしまいます。
人間の嗅覚は不思議です。嗅覚はそもそも、危険をいち早く察知するセンサー。未知の匂いに対して、まず身構える。未知=危険だからです。その正体が判明し、匂いが「馴染み」になれば、許容していく。さらに関係が深くなれば、強い愛着を抱く場合も。
とにもかくにも、今回の異臭騒ぎではっきりしたこと。それは、「匂い」がこの社会の中で強烈なアピール力を持っているということです。そして、気付けばあまりにもいろいろな「匂い」が、日常の中に充満してしまっているということ。
きっといるはず。デパ地下の食品の匂いが、上階のファシッョン売り場まで漂ってきて、顔をしかめた人。香り付き洗剤・柔軟剤が大ヒットしていますが、冬の締め切った満員電車内で、いろいろな香りが混濁し、たまらんと思っている人。食事の時間帯というのに、トイレの匂いを「くさーい」と何度も連呼するCMに、思わずチャンネルをかえた人。
チーズナゲットの教訓。それは、この社会がいわば「匂い無秩序状態」にある、ということ。もう少し冷静になって、みんなが許容できる「匂い環境」とはどうあるべきなのか。考える時が来ているのかもしれません。