時代劇で活躍するスターたち。だが、銀幕の中のスターたちは、自身の力だけで輝いているわけではない。その輝きの背後には、職人肌の裏方たちの並々ならぬ努力が存在する。
東映京都撮影所では、役者が身につける小道具を持道具というが、その持道具を担当する上田耕治さん(42)も、そうした裏方の一人だ。来年12月公開の映画『利休にたずねよ』(出演・市川海老蔵)にも参加する。
撮影中の真剣な表情から一転、「利休さんは芸術家やから、何でもいいっていうわけじゃないんです」と、上田さんは表情を緩める。
「竹皮を裂いて編み込んだ露地草履です。ここからが僕の仕事。動きやすいよう鼻緒をビニールに変えたり。3本ねりと5本ねりの鼻緒にしたり。見た目も違うでしょう」(上田さん)
小道具の話になると止まらない。それとなく上田さんの美術予算について聞いてみると「ないない、ないですよ(笑い)。竹ひとつ選ぶのも真剣。工夫も必要。終わらないんです」。
こうした“終わらない工夫”が、時代劇を支えている。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2012年12月14日号