2012年も年末が近づき、ネット界隈でもさまざまなランキングが発表されている。Googleでは昨年から日本語で「レシピ」のキーワード検索ランキングがトピックになっている。そのランキングから2012年のレシピ界の流行を、食文化に詳しい編集ライターの松浦達也氏が検証した。
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●2012年Google検索ワードランキング「レシピ」部門
1位「塩麹」、2位「醤油麹」、3位「グリーン スムージー」、4位「塩 ヨーグルト」、5位「小松菜」、6位「ポリ袋」、7位「ジャーマン ケーキ」、8位「デトックス スープ」、9位「米麹」、10位「ゴーヤ チャンプル」
まずランキングトップの「塩麹」はまさに堂々の第1位。昨年火がつき、年の前半はテレビ、雑誌、書籍などで取り上げられ、原料の米麹(9位)が値上がりしたり、店頭から姿を消すほどの大人気に。今年は見たこともない輸入モノの米麹までもがスーパーの店頭に並んだ。2位の「醤油麹」も含めて、現在、数えきれないほどの「麹」が全国の家庭に眠っている……。
今年は「発酵」「酵素」がレシピ界を席巻した1年だった。3位の「グリーン スムージー」(野菜やフルーツ、水をミキサーで混ぜ合わせたフレッシュジュース)は女性誌から人気に火がついた。4位の「塩 ヨーグルト」は「ポスト塩麹」として着々と人気を獲得し、来年にも、本格的なブレイクが期待される。
5~7位はテレビなどのメディアで話題になった素材や調理法、料理など。小松菜はNHKの『あさイチ』などでカルシウムやビタミンが豊富な食材だと紹介された。6位のポリ袋はポリ袋調理のレシピ本が情報番組などで話題に。7位のジャーマン ケーキは、ご当地紹介番組の『秘密のケンミンSHOW』で沖縄県民のごちそうとして紹介され、検索ランキングが急上昇した模様。ちなみに「ジャーマン」と言っても「ドイツ風」ではなく、「ジャーマンさんが考案した」のがそもそもの起源だという。
2012年は麹やヨーグルト、デトックスなど「健康」がテーマとなるものがランクインしている。だがこれをそのまま健康志向の高まりと捉えるのは、性急かもしれない。実際のところ、メディアで話題になったものがそのまま検索上位に来る傾向が伺える。ランク外でブームになった食材やメニューも、テレビを中心としたメディア露出がなされたものがほとんどで、ランキングの傾向を健康意識の高まりと捉えるかは、非常に悩ましいところだ。
ちなみに2011年のランキングを振り返ると、1位「節電」、2位「男飯」、3位「塩豆腐」、4位「チンジャオロース」、5位「塩麹」、6位「塩鶏」、7位「そらまめ」、8位「ゴーヤチャンプルー」、9位「キンカン」、10位「生姜焼き」。キーワードの抽出の仕方に違いがある可能性もあるが、より「レシピ」として成立するストレートなキーワードが並んでいた。
しかし不思議な共通キーワードがひとつある。昨年8位の「ゴーヤチャンプルー」が、今年も「ゴーヤ チャンプル」と微妙に名前を変えて10位にランクインしていることだ。
このメニューは、「家庭の味」として受け継がれるのは沖縄のみ。そうした背景もあってか夏になると、料理番組では改めて季節のレシピとして紹介される。さらに昨夏、節電を強いられて以来、「夏のグリーンカーテン」として窓辺をゴーヤで飾る人が増えたことも一因かもしれない。
2012年の年末に発表されるレシピランキングにまで震災の影響が現れていた……。そう考えるのは、うがち過ぎだろうか。