日経MJが恒例の今年のヒット商品番付を発表した。とくに注目したいのが渋谷ヒカリエだ。まだ入ったことのない人もいるだろう。間違えて入ってしまった、作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が語る。
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突然ですが、皆さんは通勤の時に急いでいて、間違って女性専用車に駆け込んでしまったことってありませんか? 私はあります。先日も、朝、急いでいたときに駅員が私を通せんぼするのですよ。デスメタルを爆音で聞いていたので、気付きませんでしたが、女性専用車だと気づいてびっくり。赤面しつつ、音楽をミスチルに変えた次第であります。
ここ数年、ショッピングモールなどでも性別専用が目立ってきました。
先日、日本経済新聞者は2012年の日経MJヒット商品番付を発表しました。恒例の企画ですね。西の横綱の7インチタブレット、西の大関LINE、東の小結LTEスマホなど、ネット系、IT系の商品・サービス同様に目立ったのが、商業施設です。東の横綱に東京スカイツリー、同じく小結に阪急うめだ本店、前頭に東京駅、西の前頭に渋谷ヒカリエが入りました。今年はショッピングモールのことを取り上げた速水健朗氏の書籍『都市と消費とディズニーの夢』(角川oneテーマ21新書)も話題となり、スマッシュヒットとなりました。新しい商業施設が話題となった年だったと言えます。
その中でも注目されるのは、「渋谷ヒカリエ」です。「大人の女性向け」仕様が話題となっています。そして・・・。妻と一緒に行ったら楽しかったのですけど、男同士で行った時のアウェイ感が異常だったのですよ。
先日、ある編集者さんとヒカリエで待ち合わせたんです。打合せのためです。その頃、私たち二人は、ヒカリエについてあまりに不勉強な状態でした。早めに到着したのですが、何かこう、居心地が悪いのです。いや、施設は快適そのものなのですけど、なんせ女性だらけなのです。編集者さんもそう感じていたようです。あとで、大人の女性を意識した商業施設なのだと知り、「やっぱりそうだったか」と再認識した次第です。メンズのコーナーもあるのですけどね。
渋谷というと、若い人の街、特に女性においては「ギャル」の街だと思われていますが、東急文化会館の跡地に立ったこのヒカリエは大人の女性仕様にこだわっています。
まず、快適アクセス。JRに東横線、井の頭線、銀座線、半蔵門線、副都心線が止まる渋谷駅に直結。濡れずに入ることができます。テナントも大人女子が喜びそうなブランドばかり。大人でなければ手が届かない価格設定になっています。
女性に喜ばれているのがトイレです。ヒカリエでは、トイレのことをスイッチルームと呼びます。気分を切り替える場所という意味のようです。フロアごとに特徴があります。お店で扱っている商品のサンプルを利用することもできます。
ユニークな接客をしているお店もあります。例えば、ヒカリエに入っている
CLINIQUEでは、腕にバンドをつけることができ、「急いで買いたい」「一人でゆっくり見たい」「相談したい」などの意思表示をすることができます。
実は白百合女子大学で担当している講義で、商業施設の調査プロジェクトを実施したのですが、学生がもっとも取り上げた施設がヒカリエでした。大学から近いということもありますが、大人女子の世界に興味津々といった様子でした。
女性専用ネタが続きましたが、だいぶ前にオープンした新宿の伊勢丹メンズ館、数年前にオープンした有楽町阪急のメンズ館など、メンズ仕様のデパートはありますね。ルミネやパルコもどちらかというと、女性向けな感じです。
この「ターゲットを絞り込む」という発想は満足度をあげる意味でもアリだとは思います。まあ、ターゲットじゃない性別だけの集団で行ったときのアウエイ感が半端なかったですが。
カップルで行ったときに気持ちいいか、ちょっとだけターゲット外の異性が入り込む余地が微妙に用意されているかどうか。この辺、鍵だと思った次第であります。カップルで行きやすいかどうか、と。
さて、性別専用型商品・サービス、来年はどんなものが出てくるのでしょう? 激しく傍観したいと思います。夜の電車で東スポを片手に考えた次第であります。はい……こういうおっさんがいるから女性専用車ができるんでしょうねえ。