京都よし廣の和菓子のクリスマスケーキ。サンタがプレゼントを担ぐ
先日発表された2012年「日経MJヒット商品番付」にランクインした「コンビニチルド和菓子」。大福やどら焼きといったコンビニの冷蔵和菓子がいま、“ちょこっと食べたい”若い女性や健康志向のシニア層の心を掴んでいるという。3月に発売されたローソンの「あんこや」シリーズは、累計3000万個を販売する人気ぶりだ。
とはいえ、長期的に見ると、和菓子業界は苦境にある。1995年に約4700億円だった和菓子の生産額は、2011年に約3800億円にまで下がった(全国菓子工業組合連合会のまとめによる)。市場が減少傾向にあるなか、新たな需要開拓が急務となっているようだ。
そんな状況を背景に、昨今、ジングルベルの響くこの季節には“クリスマスを彩る和菓子”が登場する。クリスマスケーキといえば、真っ赤な苺と真っ白な生クリームの豪華なホールケーキが王道ではあるが、和菓子で楽しむクリスマスにも、一味違った味わいがある。
京都二条に店を構える総本家「よし廣」は、上生菓子のクリスマスケーキ(写真)を予約販売する。数年前から販売を開始したが、上生菓子のホール型は全国的にも珍しく、例年人気が高まっているという。ケーキのベースから、サンタクロースの人形まで、一つ一つがすべて職人の手作りだ。卵や牛乳を使用していないため、アレルギーを持つ人も安心して食べられる。
和菓子業界のクリスマス参入について、菓子研究家(和菓子&アメリカンスイーツ)の原亜樹子さんはこう分析する。
「最近、クリスマスシーズンに販売される和菓子のデザインやアイディアが豊富になっていますが、クリスマスをきっかけに、和菓子の客層を広げていきたいという狙いがあると思います。季節のイベントは重要で、バレンタインデーでも、和菓子の商品が出るようになっていますね」
そして、クリスマス和菓子の特徴について、幅の広さやデザイン性をあげる。
「一つは種類が豊富なこと。和菓子とひと言でいっても、上生菓子、あんみつ、せんべいなどと多様ですから、サンタやツリーの模(かたど)り方も多彩。もちろん味も色々楽しめます。もともと和菓子は、洋菓子に比べて、素材よりもデザインなど視覚で季節を表現する面が強いんです。栗やゆずといった季節の素材は使いますが、それ以上に、デザインが繊細で豊か。季節ものとの親和性は高いです。
もう一つは、動物性油脂を含んでいないため、ヘルシーなこと。健康を気にする方への“おもたせ”にも喜ばれると思います」
和菓子業界の危機感が新しい商品を生み出し、我々の目と舌に、新たな楽しみをもたらしつつある。最後に、原さんのお勧めのクリスマス和菓子を教えてもらった。
■東京・飯田橋「萬年堂」:クリスマスツリーの形をした看板商品「御目出度糖(おめでとう)」などを販売
■東京・南青山「菓匠 菊家」:聖夜、リース、ポインセチアなど、クリスマスをモチーフにした生菓子を販売
■東京・亀戸他「船橋屋」:「クリスマスフルーツあんみつ」を販売。星型のくず餅、ツリー型の抹茶羊羹に苺などのフルーツを添える。
■東京・銀座「銀座 松崎煎餅」:トナカイ、ツリーなどクリスマス絵柄の煎餅、「江戸瓦 暦」を販売。
■京都・下京区「末富」:クリスマスをモチーフにした生菓子を販売。東京では新宿タカシマヤなどで取り扱いがある。
※上記はクリスマス限定商品のため、販売期間などは店に要確認