いま、中国のアート市場が隆盛を迎えている。世界的なオークションハウス、クリスティーズでは今年、香港で中国アートとしては最高の770万ドル(約6億1600万円)で中国人画家の絵画が落札された。絵画の値段が最も高額なトップ10の画家のうち、中国人画家が2人入っている。
クリスティーズによると、今年上半期の香港クリスティーズでの競売総額は35億ドルにも達し、昨年同期比の2倍以上。これは世界中のクリスティーズでも第4位の位置に付けている。「3年前の香港市場での売り上げはクリスティーズ全体のわずか3%だったことを考えれば、アジア市場はまさに驚異的な伸びを示している」と香港市場の関係者は驚嘆する。
香港では、中国政府の肝いりで、北京の不動産開発業者が香港の西カオルーン地区に巨大なアートと文化を統合する総合美術博物館を建設する予定だ。香港特別行政区政府によると、この総工費は新たに購入する美術品を含めて30億ドル(約2400億円)にも達し、早ければ来年にも着工する。
香港政府関係者は「美術館と名前がついているが、オークションができる施設も備えている」と明かす。
「もうかる中国アートを放っておく手はない」とばかり、中国内にもアート専用のオークション会場を建設しようとの動きが出ている。「候補地は国際都市として、海外からビジネスや観光客が訪れる福建省廈門(アモイ)市で、総工費はいまのところ約2億6000万ドル(約208億円)。完成すれば、香港と並んで、大きな収益が見込まれる」と不動産開発業者は明かす。
中国人のアーティストとしてはフランス在住のチュー・トゥチュン氏が知られている。チュー氏は1920年、中国大陸の江蘇省生まれで、現在92歳。中国共産党の統治による新中国建国後、台湾に渡り、その後、パリで絵画の修行をして、そのままパリに居住。中国人画家というよりも、いまやフランス在住の画家として、フランスを中心に活躍している。
だが、いま世界で話題となっている中国人画家は中国国内で創作活動を続けているのが大半だ。その筆頭が曾梵志氏で、1964年、武漢生まれの48歳。いまは北京が創作活動の中心だ。
彼の絵画は960万ドル(約7億6800万円)の値がついたこともある。もう一人は張曉剛氏で、1958年、北京生まれの54歳。2011年4月、サザビーに出展された彼の絵は600万ドル(4億8000万円)で落札された。この2人が世界で最も売れている画家トップ10に入っている。
中国国内では、この2人に続く有望な画家や芸術家は多数ひしめいており、中国のアート市場が、ニューヨークやロンドン、パリも凌駕するが来るのもそう遠くないかもしれない。