街中のプリントショップやコンビニなどで、年賀状と併せてよく目にする「喪中はがき」の受付け。自分が喪中である場合だけでなく、喪中はがきをもらった際にも、“どう対処したらいいのか?”と思うことは多い。喪中のマナーは、土地柄などによっても違いがあるが、基本的にはどういったことに気をつければ良いのだろうか。葬儀相談員の市川愛さんはこう語る。
「喪に服する範囲は、一般的には故人を中心とした一親等(両親、配偶者、子)と、二親等(兄弟姉妹、祖父母、孫)までとされていますが、別居・同居によって考え方を変える人もいます。また友人や知人などプライベートのおつき合いの方には喪中はがきを送り、ビジネス上の関係者の方には、通常どおり年賀状を送るなど、プライベートとビジネスを分けるというケースも多いですね」
また本来であれば12月初旬までに送るのがマナーではあるものの、これから準備する場合、既に年賀状を送ってしまった人がいたとしても、気持ちの負担をかけない書き方はあるのだろうか? 喪中はがきの書き方のポイントや、入れるべき文章も気になるところだ。
「喪中はがきの内容は、『喪中につき、新年のご挨拶を失礼させていただきます』という挨拶と、『誰が、いつ、何歳で亡くなったのか』に加え、故人が生前お世話になったお礼などを入れます。
喪中であっても年賀状を受け取りたい方や、これからご準備される方は、喪中はがきの文面に“年賀状をお待ちしています”や“例年どおり、近況をお知らせください”など、文例を参考に書き添えてみてはどうでしょうか」(市川さん)
【文例】
・皆さまからの年賀状は励みにもなりますので、どうぞ例年どおりお送りくださいませ。
・年賀状の無いお正月は、さみしいものです。皆さまからの年賀状は、いつものようにお待ちいたします。
テンプレートなどを上手く活用しつつ、こうしたコメントを加えることで、気遣いやコミュニケーションの糸口を示すのは良さそうだ。
喪中でも年賀状を受け取ることはマナー違反ではなく、喪中はがきを受け取った側も新年を喜ぶ年賀状ではなく、一般的な新年の挨拶の代わりに「喪中見舞い申し上げます」といった文章を添える「喪中見舞い」や「年始状」として、遺族を励ます便りを出すのが良いという。
ネオマーケティングによる喪中時の年賀状に関するインターネット調査では、「喪中時に年賀状を受け取ることがマナー違反でないなら、年賀状は欲しいか」という質問に、57.6%が「欲しい」と回答。20代が最も多い67.0%という結果になった。若いために身近な人の死に接する機会が少ないこともあるが、喪失感のある時ほど、誰かと繋がっていることを感じたいのは自然な気持ちで、そうした点は年代を問わずあるだろう。
同調査の「喪中時に年賀状をもらえなくて、さみしかったことがあるか」という質問には、「さみしかった」が58.4%。「喪中の時、年賀状をもらってうれしかったエピソード」では、「喪中で誰も年賀状をくれなかったのに、数通だけいつもどおりの年賀状が来たのがうれしかった」(60歳男性)や「恒例行事なので年賀状が来ないと、『喪中なんだ』となおさら悲しみが増していた時に、連絡をしていなかった友達からの近況をもらった」(38歳女性)といったコメントも。
喪中とはいえ、新年に寂しさを深めるのは切ないもの。そうした時に受け取る友人からの近況は、人とのつながりを感じさせ、大きな慰めになるようだ。
受け取って嬉しいだけでなく、“送って良かった”と感じた人もいる。TVプロデューサーやタレントなど、幅広く活躍しているテリー伊藤さんは、「私にとっての年賀状」というインタビューの中で、喪中の親友に“あえて送った年賀状”について語っている。
「広島に住んでいた親友の奥さんが亡くなったことがありました。最後、入院している時に、広島までお見舞いに行きました。でも、亡くなってしまった。そういう時、喪中ということで、普通は年賀状を書かないというんですが、僕は書きたかった。だから、あえてそういう想いを年賀状にしたためて出しました。『こういう時は遠慮するってわかってたけど、書きたかった』と。
そうしたら、『ありがとな』って返事がきて、本当に切なかったですね。でも、そういうやりとりも年賀状にあっていいと思います。喪中だから一律に書かないっていう習慣はおかしいと思うんですよ。2月に亡くなって、正月だと1年近くたっているんですから。喪中で遠慮するという風習は考え直してもいいんではないか思っています」