日銀に対する発言など、安倍晋三・自民党総裁の軽口が止まらない。過激な発言が止まらない背景には何があるのか。ジャーナリストの須田慎一郎が解説する。
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自民党の安倍晋三総裁から景気対策に関して大胆な発言が次々に飛び出している。最たるものは、内閣が日銀総裁の解任権を持つように日銀法を改正すべしというものと、日銀は無制限の金融緩和を実施すべきというものだ。
さらに口が滑ったのか、「建設国債をできれば日銀に全額買ってもらうことで強制的にマネーが市場に出ていく」と建設国債の直接引き受けを要求したと解釈できる発言をしていた。さすがにこれは後になって軌道修正を図った。それにしても自民党が突如として日銀を目の敵にし始めたのはなぜか。
「自民党が政権与党に復帰した際に、10年間で200兆円の公共事業投資の実施を約束する『国土強靱化基本法案』の成立を目論んでいるのは周知の通り。その財源を確保するために日銀にはもっと国債を買い入れて欲しい、というのが安倍氏の考えだ」(自民党の有力国会議員)
そして、安倍氏をはじめとする自民党の公共事業投資拡大派の目には、日銀が実施している金融緩和策はまだまだ不十分と映っているのだ。
だが、前出の議員は苦言を呈する。
「さすがに最近の安倍総裁の発言は悪乗りが過ぎる。背景には財務省の“お墨付き”を得たとの自信があるようだ」
公共事業拡大路線は財務省にとっても願ったりかなったりだ。というのも財務省の最大の関心事は消費増税の予定通りの実施に他ならない。財務省関係者がこう言い放つ。
「2014年10月に消費税率を8%に引き上げるためには、何が何でも2013年4~6月期の景気動向を上昇基調にしておく必要がある。なぜなら改正法の“景気条項”によって、景気が回復しなければ税率を上げられないからだ。景気を良くするためだったら公共事業投資だって何だってバンバンやったらいい」
そもそも財務省は自民党総裁に復帰する前段階から安倍氏との間に親密な太いパイプを築いてきた。そうした意味では、両者の思惑は完全に一致していると見ていい。
日銀は苦しい状況に追い込まれてしまったようだ。
※SAPIO2013年1月号